竹中工務店の長谷川寛氏は、施設が大きくなるほど、パブリックスペースが重要になると捉える。大型施設は、1カ所の漏水が多大な影響を及ぼすため、細心の注意を払いながら“隠す納まり”を心掛ける。
内外を一体的に利用できる空間を数多く設計しています。
近年手掛けることが多くなった大型建築では、できるだけパブリックな空間が建物の中心に来るような設計を心掛けています。所用を済ませた後にもそのままいたくなる場所が街の中に少ないと強く感じているからです。居場所は、屋外と一体になってこそ価値が高まると思っています。
例えば「グローバルゲート」(2017年)の低層部の商業施設では、内外の境界が曖昧なパブリック空間を各所に設け、多くの植栽を施しました〔写真1〕。1階アトリウムは大開口を開けると、外部のオープンエアプラザと一体的に利用できます。
「常葉(とこは)大学静岡草薙キャンパス」(18年)は、ビル型の都心キャンパスと、豊かな敷地に校舎が分散する郊外型キャンパスの利点を取り入れ、多様な居場所をちりばめています。
ここには塀がなく2階までは誰でも入れます。建物の内外をつなぐ軒下空間やテラスを設けて地域の人々が日常的に立ち寄れるようにしています〔写真2〕。2階に諸室を一体的につなぐ「キャンパスリビング」を配して学びを教室外へも開放しました。
- 大型施設では公共スペースの確保を重視し、といなどを徹底して見せない空間を実現
- 地下階の上部に高木を植栽する場合などは、設計の初期段階で納まりを決定する
- 標準の水仕舞いディテールを重視する一方で、特別な納まりを恐れずに最適化を