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この連載では、デザインに加え、防水や水仕舞いに一家言を持つ設計者に登場してもらい、独自の“ルール”を、具体的な事例の納まりを通して聞く。初回は雨漏りなしの内藤廣氏だ。

防水や雨仕舞いを考える際、ベースとなるような教訓はありますか。

ないとう ひろし
ないとう ひろし
1950年生まれ。76年早稲田大学大学院修了。フェルナンド・イゲーラス建築設計事務所(スペイン)、菊竹清訓建築設計事務所を経て、81年内藤廣建築設計事務所設立。2002~11年東京大学教授、現在は同大学名誉教授(写真:山田 愼二)

 スペインの設計事務所から日本に戻った後、西澤文隆さん(当時、坂倉建築研究所)に呼ばれてよく食事をしていました。あるとき、西澤さんがしみじみとこう言ったんです。「水は賢い」と。水の動きは設計者の想像を超えているというのです。

 その後、独立して最初に手掛けた「ギャラリーTOM」(1984年)で、その言葉通りの痛い目に遭いました。水の問題を解決できなくて苦労しました。雪の降る夜中に屋根の軒先まで見に行ったこともあります。

 結局、デザイン優先だとそういう箇所が出てくるわけです。このプロジェクトで得た教訓は、「コーキングに頼ってはいけない」ということ。コーキングに頼りすぎた防水や雨仕舞いは基本的にダメですね。

静岡県草薙総合運動場体育館(2015年)
大きな屋根はルールに忠実に

静岡の体育館のような大型施設では、豪雨などの際には、大量の雨水に対応する必要がありますね。

 私たちのセオリーにのっとった屋根の防水・雨仕舞いを講じています。上部は3寸勾配、下半分は急勾配の屋根です。面積の大きな屋根ですが、最大傾斜と部材の流れを一致させています〔写真1〕。屋根の仕上げ材は、私たちが標準的に使っている亜鉛合金材で、棟部分も標準的な納まりです。この建物のように、屋根の面積が大きいときは、経験値にない材料を用いることは危ない。挑戦的な材料は避けたほうがいいでしょう。

〔写真1〕大型の屋根を事務所のルールに従い仕上げる
〔写真1〕大型の屋根を事務所のルールに従い仕上げる
「静岡県草薙総合運動場体育館」を北東から見る。右手がメインフロア。上屋根は亜鉛合金板の縦はぜぶき、下屋根は亜鉛合金板の折板ぶき(写真:吉田 誠)
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 また、建物外周にある鉄筋コンクリート(RC)造のリング部分が雨の「受け皿」になるので大雨に対してもゆとりがあります。(PROJECT 2015年 参照