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豪雨の増加、中大規模木造の需要の高まりなどを受け、金属製の大型雨といが注目されている。鋼板やアルミ、ステンレスなど幅広い製品を手掛けるタニタハウジングウェアにとい選びのポイントを聞いた。

谷田 泰氏(左)タニタハウジングウェア代表取締役社長 飯島 清一氏(右)タニタハウジングウェア開発部商品開発課課長(写真:日経アーキテクチュア)
谷田 泰氏(左)タニタハウジングウェア代表取締役社長 飯島 清一氏(右)タニタハウジングウェア開発部商品開発課課長(写真:日経アーキテクチュア)

POINT 1 金属製雨といの種類
適材適所で素材を選ぶ

金属雨といの種類にはどんなものがありますか。

 当社は⾦属⾬といの製造販売を主⼒とし、溶融アルミ亜鉛合⾦めっき鋼板(ガルバリウム鋼板)、ステンレス、アルミニウム、そして銅板とステンレス板の熱融着材でつくった製品をそろえています。値段の⽬安は、溶融アルミ亜鉛合⾦めっき鋼板製を1とするとアルミ製は2倍、ステンレス製は3倍。ステンレスの塗装品はさらに約3割⾼くなります〔写真1〕。

〔写真1〕鋼板製やアルミ製、ステンレス製などで構成
〔写真1〕鋼板製やアルミ製、ステンレス製などで構成
タニタハウジングウェアによる⾦属⾬といの製品例。溶融アルミ亜鉛合金めっき鋼板製、アルミ製、ステンレス製のほか、銅製の製品がある(写真:日経アーキテクチュア、タニタハウジングウェア)
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 当社は、溶融アルミ亜鉛合⾦めっき鋼板は⼀部を除いてプレコート、それも表裏とも塗膜約20ミクロンのポリエステル樹脂焼き付け塗装のものを採⽤しています。⼀般的な溶融アルミ亜鉛合⾦めっき鋼板は、板の裏⾯は、結露による腐⾷防⽌のためにサービスコートと呼ばれる薄膜の塗装だけが施されたものです。

 ⼀⽅で、⾬といは板の裏側となる内側に⾬が流れたり滞留したりし、酸性⾬が降る場合もありますから、当社は両⾯とも耐候性と耐⾷性の⾼いポリエステル樹脂焼き付け塗装のものを使っています。塗料メーカーによると、フッ素樹脂焼き付け塗装と同等の耐候性があるそうです。

 ステンレス製は、無塗装でも⾬といとして⽳が開くなどの致命的な機能劣化が発⽣しないことを⾃社試験で確認しています。どちらかと⾔えば外側への配慮が必要です。ステンレスはさびにくい材料ながら塩分や鉄粉などの付着によって⾚茶⾊の、⼀般の⼈が認識するさび⾊が発⽣して意匠性が損なわれます。

 ステンレスで、特にSUS304のさびは、⾃然環境下では材料の表⾯で⽌まることがほとんどです。⼀⽅でさび始めると、素材全体がボロボロになるまで進⾏してしまう鉄のさび⾊と同じため、悪いイメージを与えます。ステンレス製の⾬といは、⼤概放ったらかしなので、塗装することを推奨しています。また、特に⾬といが軒下に⼊っていると塩が堆積しやすく、さらには結露による湿潤と乾燥の繰り返しで塩分濃度も⾼くなり、当社の経験では、⾬といの設置後10~15年でさびが出ます。

海際から1km以内は注意

 かえって⾬掛かりがあるほうが⾬で塩が流れるので、ステンレスだけでなく⾦属の⾬といにとっては条件がよいようです。しかし、⾶来する塩分が多くなる塩害地域の場合はさびを防ぐため、フッ素樹脂で完全焼き付け塗装を施すのが安⼼でしょう。

 このような理屈から、塩害地域で溶融アルミ亜鉛合⾦めっき鋼板製の⾬といを使うことはお勧めできません。材料メーカーが「海際から1km以内は気をつけるように」と⾔うのは、⼩⼝が鉄とめっきの素地状態だからです。しかし当社では、⾬といとしての機能が損なわれるまで劣化した話を今のところ聞いていません。

 これは、全ての⾬といが⾬掛かりのない場所に採⽤されているわけでもなく、施⼯者が⼩⼝を丁寧に補修してくださっていることもあるからだと思います。建物の場所ごとに細かく使い分けせず、安⼼して採⽤いただくには、塩害地域ではステンレス製か、アルマイト処理を施したアルミ製が有利と考えられます。

 ⾦属⾬といでは、切ったり張ったり加⼯したときの板の⼩⼝に配慮しなければなりません。アルミも⽩さびが出ます。⽩いので目立ちませんが、特にファサードなど⼈⽬に触れる部分に⼩⼝が現れる場合は、気をつける必要があります〔写真2〕。

〔写真2〕アルミ製でシャープに
〔写真2〕アルミ製でシャープに
⼤阪府にある「⾵の⼦保育園」(設計:井上久実設計室)。縦といには、丸たてとい「ビルアルミ」の60φ・114φ(シルバーカラー/バンドレス)を使⽤(写真:タニタハウジングウェア)
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