鋳物の外装材で浮遊感を持たせ、眺望を生かす外部デッキを要所に配置した設計が特徴だ。ウレタン塗膜防水によってパラペットの高さを抑え、意匠性とコストダウンを両立する。

自らが設計する建物にどんな特徴があると考えていますか。
特徴の1つは、浮遊感のある建物が多いことだと思います。例えば、「追手門(おうてもん)学院大学ACADEMIC-ARK」(2019年)では、建物の外周をオーバーハングさせて、ステンレスキャストの外装材で外壁全体を包んで浮遊感を持たせています。
もう1つは、高さを抑えた空間をあえてつくる点です。実際、いろいろな人から「須部さんの建築は天井が低いね」とよく言われます。
自分の建築を振り返ってみると、迷路的な空間をつくりたい、自然界のように多様な空間をつくりたいという欲求を持っている気がします。それは中学・高校時代に山岳部で山を歩いていたからかもしれません。
山肌に張り出す巨岩が大好きで、本能的にそこに登ってみたくなる。さらに、チラッと見えた景色に引かれてそこを目指してみたくなります。その意味では「眺望」も私が大切にしている要素の1つです。
台北南山広場(2018年)
雨から守るステンレス外装材
複数の屋外デッキを設け、まさに眺望を生かしています。水仕舞いには苦労されていますか。
雨水処理や防水は、それまで用いてきた手法と基本的に同じです。台北南山広場の場合、低層の商業棟を覆うステンレス製の外装は、米国のコンサルタントなどと一緒に検証し、現場で暴露試験もしました。ステンレス材はメンテナンスフリーです。この外装があり、かつ低層部はオーバーハングさせており、直接、建物に雨が掛かりにくい構成です〔図1〕。
防水・納まりのポイント
- 外壁を鋳物の外装で覆って上部をせり出し、浮遊感を出しながら雨掛かりを防ぐ
- 豪雨などを想定し、オーバーフロー管を追加。最大雨量の3倍以上の処理能力に
- ウレタン複合防水でパラペットを縮小し、意匠性とコストダウンを両立