山梨知彦氏は内外を曖昧につなぐ設計を志向し、床とテラスをフラットで納めることが多い。外部にはピット状の防水層をつくり、その上に仕上げを載せるなど、確実な防水を心掛ける。
建築自体をどう捉えて設計に向かっていますか。
まず、世界はひとつながりの空間で、そこからある領域を切り取ることが建築の原点だと思っています。外部と一旦切り離すけれど、また微妙な空間のつながりをつくる。「内外の連続」とよく言いますが、単純につなぐのではなく、一回切ってから曖昧につなぐことが私の関心事です。
例えば、栃木県日光市の「On the water」(2015年)は、外部テラスの床レベルを中禅寺湖の湖面とそろえています〔写真1〕。これに限らず、床の高さを内外で同じにする方法はよく使っています。「木材会館」(09年)では、内外の天井・床のレベル差をそれぞれゼロにすることで、連続感を出しています〔写真2〕。
内外をフラットにするとき、防水の納まりはどうするのですか。
安全なディテールで内外をつなごうとするため、防水は厳しい闘いです(笑)。内外の床面をそろえる場合、外部も床に仕上げ材を載せ、その下にピット状の防水層をつくります。
防水の立ち上がりは必ず取って、その上に仕上げを浮かす形式です。この立ち上がりがないなど無理な納まりは避けるべきだと考えています。
このやり方は良いことがたくさんあります。まず、仕上げ面の水ははけてしまうので、池になりにくい。そのために下階の梁の納まりは苦労することもあるのですけれど(笑)。
もう1つは、メンテナンスがきっちりできること。普通は防水層の上に押さえコンクリートを施しますが、それは私の感覚ではメンテナンス上あまりよくない。一方、露出防水はコストが安いけれど劣化しやすい。でも、床仕上げの下に防水層を入れる納まりだと、床を外すと防水が露出する。防水層を健全な状態で保ちつつ、補修が容易にできるわけです。
- 内外の境界は、外部に防水層を立ち上げた上で仕上げ材を載せ、内部とフラットにつなぐ
- 雨水の排水ルートは、高低2つのレベルに加え、できる限りオーバーフロー用を備える
- 防水の種類は混ぜずにシンプルに、かつメンテナンスができるように配慮する