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政府が旗を振り、官民一体で進めている「働き方改革」。従業者の高齢化が急速に進む建設産業では喫緊の課題だ。いかに若手の入職を促し、職場に定着させるか。日経コンストラクションは、若手にとって魅力的な職場をつくるための実践手法をまとめた書籍「建設版 働き方改革実践マニュアル」を2019年9月に発行した。連載では、書籍の一部を紹介する。第1回は、現代の若者像を通して、若手に選ばれる職場環境を考察する。(日経アーキテクチュア)

 働き方改革の議論になると、「残業を減らす」「休日を増やす」などという単純な話に終始することが多い。もちろん、労働関連法の規制に準じた残業時間や休日数に配慮して、「働きやすい」職場をつくるための努力を怠ってはいけない。

 しかし、建設産業では、雨が降ったり、風が強かったりすると実施できない作業が多い。台風や地震が襲来すれば、国土を守るために現場に駆け付けなければならない。予定通り残業を減らしたり、休日を増やしたりすることは容易ではない。

 半面、建設産業ほど「やりがい」の大きい仕事はない。建設した構造物は長期にわたって存在し、地図に掲載されるケースも多い。「建設業は地球の彫刻家」と呼ぶ人もいる。

 このような「働きやすさ」と「やりがい」の双方がある職場を「働きがい」のある職場という。働きやすさとやりがいを高め、働きがいのある職場をつくることこそが、建設産業の真の働き方改革といえる。

 建設企業の多くがそうした取り組みを進めれば、若者の入職が増え、業界が活気にあふれるようになるだろう。各社の働き方改革が業界の活性化につながるわけだ。

首位は「自らの成長」

 リクルートキャリアが実施した調査によると、2019年に卒業する学生が建設会社を就職先として確定する決め手となった項目のトップは、「自らの成長が期待できる」の47.3%だった〔図1〕。

〔図1〕就職先を確定する際に決め手になった項目
〔図1〕就職先を確定する際に決め手になった項目
※就職先の業種を抜粋したため、6業種のnの合計は全体のnよりも少なくなっている(資料:リクルートキャリア)
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 半数近くの学生が「自らの成長が期待できる」という項目を選んだ点を踏まえると、建設会社が魅力ある人材を採用するには、教育システムの充実が重要だと分かる。

 3番目に回答が多かった「会社や業界の安定性がある」(46.2%)という項目については、建設業を選んだ学生が他業種を選んだ学生よりも割合が大きい点が注目に値する。建設会社には、安定を求める人材が集まる傾向にあるといえる。

 ならば、入社した若者はどのような特徴を持っているのだろうか。三菱UFJリサーチ&コンサルティングと日本生産性本部は、それぞれ18年度の新入社員を対象に意識調査を実施。いずれも建設業だけを対象にした調査ではないが、その結果からは今どきの若者像が浮かび上がる。

 まずは、新入社員が会社や職場に望む内容を見てみよう。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査によると、「人間関係がよい」という項目が最も重視されている。人間関係に重きを置く考えが透けて見える。「地位が上がる」といった個人の昇格を重視する若者は少ない。周囲と協調して仕事に取り組むことをより大切にする姿勢がうかがえる〔図2〕。

〔図2〕出世よりも人間関係が大切
〔図2〕出世よりも人間関係が大切
(資料:三菱UFJリサーチ&コンサルティングの「2018年度新入社員意識調査アンケート結果」)
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 会社に望む項目として2番目に多かった「自分の能力の発揮・向上ができる」については、若者の意識が急速に低下している。05年度に8割近くあった回答が、18年度には55%を割り込むまでに至った。

幅を利かす「自分ファースト」

 「残業がない、休日が増える」を会社に望む回答率は、12年度から上昇傾向が続いている〔図3〕。プライベートと仕事の両立を重視する「自分ファースト」志向が強まっている。

〔図3〕金よりも時間を重視する
〔図3〕金よりも時間を重視する
(資料:三菱UFJリサーチ&コンサルティングの「2018年度新入社員意識調査アンケート結果」)
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 「給料が増える」は横ばい傾向だ。この項目は、15年度までは「残業がない、休日が増える」よりも重視されていた。17年度以降、両者の回答率が逆転。現在は、給与よりも休日を望む若者の方が多くなっている。

 会社から「私生活に干渉されない」ことを望む若者も増加傾向にある〔図4〕。職場に良好な人間関係を求める一方で、その関係を休日やプライベートの時間にまで持ち込むことには否定的だと推察できる。

〔図4〕私生活への干渉を拒む
〔図4〕私生活への干渉を拒む
(資料:三菱UFJリサーチ&コンサルティングの「2018年度新入社員意識調査アンケート結果」)
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 自分ファースト志向は、日本生産性本部が実施した調査結果にも表れている。「残業が多いがキャリア・能力を高められる職場」よりも、「残業がなく自分の時間を持てる職場」を選ぶ若者が多く、その傾向は年々強まっている〔図5〕。自分のキャリアップに反する仕事を我慢して続けるのは無意味だという回答も、年々増加している〔図6〕。

〔図5〕キャリアよりも残業の少なさを重視
〔図5〕キャリアよりも残業の少なさを重視
(資料:日本生産性本部「2018年度新入社員春の意識調査」)
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〔図6〕我慢して続けるのは「無意味」
〔図6〕我慢して続けるのは「無意味」
(資料:日本生産性本部「2018年度新入社員春の意識調査」)
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