新型コロナウイルスが猛威を振るうなか、職場の「安全」「安心」「安定」の重要性を再確認した人も多いのではないか。建設産業への若者の入職と定着を促すには、「安全に安心して安定して働きたい」という欲求を満たす必要がある。そのために、まずはリスクアセスメントを実施して、従業員のけがや病気を防ぐ。併せて、従業員の満足度を定期的に調査して、仕事や職場への不満や不安を解消する取り組みも有効だ。(日経アーキテクチュア)
働きやすさとやりがいを兼ね備えた働きがいのある職場の実現を目指す「建設版 働き方改革」─。今回は、従業員が安全に安心して安定して働ける職場づくりを考える。
心理学者のアブラハム・マズローの欲求5段階説によると、「待遇良く働きたい」という第1段階の生理的欲求がある程度満たされると、第2段階の安全の欲求が現れる。
これは、身の安全、身分の安定、他人への依存、保護されたい気持ち、不安・混乱からの自由などを求める欲求だ。マズローは、生理的欲求と同じぐらい強い欲求だと分析していた。
だからこそ、働きがいのある職場をつくるには、この欲求を満たすことが必須となる。安全に安心して安定して働ければ、従業員は「会社から大切にされている」との実感を抱く。そうなれば、従業員は指示されなくても、自主的に働くようになる〔図1〕。
安全とはけがや病気をしないよう守ってくれること、安心とは不安なく働けること、安定とは仕事の量と質が安定していることを指す。以下、これらを満たす職場づくりを説明する。
安全な職場をつくるには、従業員のけがを防ぐリスクアセスメントを実施する。リスクアセスメントとは、これから行う仕事にどのような危険が潜むのかを事前に抽出して対策を立てる取り組みだ。対策は4段階に区分できる〔図2〕。
建設現場であれば、最初の「設計や計画の見直し」は、工法や機械を選択して本質安全化を目指す取り組みだ。例えば、足場から墜落する恐れがある場合、無足場工法や大ばらしで高所作業を排除・低減する対策を考える〔図3〕。
次の工学的対策は、設計や計画の見直しで危険性や有害性を除去できなかった場合に行う。例えば、ガードや安全装置を付ける対策だ。足場からの墜落防止については、手すり先行工法での手すりの設置、交差筋交い、下桟や上桟の設置、保護ネットの利用などが挙げられる。