中国湖北省武漢市で「謎の肺炎」が報告され始めたのは2019年12月。当初は対岸の火事と捉える向きが多かったが、新型コロナウイルスの感染は瞬く間に世界に広がり、年度末の繁忙期を迎えた建築界を直撃した。
「感染した社員に直近の渡航歴はない。イベントなどにも参加しておらず、感染経路が分からない」。五洋建設広報グループの佐藤豪担当部長は困惑する。同社では3月4日、50代の建築営業職の社員が新型コロナウイルスに感染したことが判明した。
この社員は2月25日まで電車などで通勤していた。翌26日未明に発熱し、医療機関を受診してからは自宅待機していたという。同社は同じ部署の社員などに3月10日までの自宅待機や在宅勤務を指示し、健康状態の経過観察を実施している〔写真1〕。
3月12日時点で、国内の感染者は判明しているだけでも累計620人。世界の感染者は累計12万5000人を超えた〔図1〕。死者数は国内で15人、世界で4613人だ。五洋建設の社員のように、誰がどこで罹患してもおかしくない状況だ。
3月13日には、新型コロナウイルス感染症を適用対象に加えた改正新型インフルエンザ等対策特別措置法が成立。政府は国民に対する外出の自粛要請などを可能とする「緊急事態宣言」を発令できるようになる。
感染拡大を防ぐため、3~4月に予定されていた建築関連のイベントは軒並み中止や延期に追い込まれている。JR東日本は、3月14日の高輪ゲートウェイ駅開業に合わせて半年間の開催を予定していた大規模イベント「Takanawa Gateway Fest」の延期を2月28日に発表した。JR山手線に49年ぶりに誕生した新駅としては、寂しい船出となった〔図2〕。施設の開業も遅れている。安藤忠雄氏が設計・寄贈し、3月1日のオープンを予定していた図書館「こども本の森 中之島」は当面、開館の延期を決めた。