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独り善がりにならない舵取り

 22棟の設計やデザインには、多数の参加者の意識を1つにできる「マスターアーキテクト」が必要だった。HARUMI FLAGは桁外れに大きく、特定の建築家やデザイナーに全てを任せるのは現実的ではない。そこで11の事務所から合計25人の建築家やデザイナーが招集された。これが設計体制の大きな特徴だ。

 重要なのは独り善がりにならないこと。全員で1つの街をつくる意識を持つ必要がある。先導するのがマスターアーキテクトの役割である。筆頭は光井純アンドアソシエーツ建築設計事務所(JMA、東京都品川区)代表取締役の光井純氏。HARUMI FLAGにおける建築の司令塔だ。

 光井氏がこだわったのは「飽きさせない街づくり」。HARUMI FLAGは一過性の街ではなく、何世代にもわたって住み継がれていくことを目指している。しかしデザインが単調だと「住人はすぐに飽きて退屈になってしまう」(光井氏)。だから、建築家やデザイナーが25人も参加する。

 一方で、「街全体の統一感も必要だ」(光井氏)。建築家には個性を発揮してもらいながら、「別の建物からデザインや色合いを読み取り、自身の施設に反映する。それを促すのが私の仕事だ」と光井氏は説明する。

 多世代の住人が誰でも、お気に入りの場所を見つけられるようにする。そこに住人が集まり、「出会いや交流が自然に起こってコミュニティーが生まれる」(光井氏)。こうしたプレイスメイキングが飽きさせない工夫だ。

 特定建築者の代表会社である三井不動産レジデンシャル東京オリンピック・パラリンピック選手村事業部推進室主管の高木洋一郎氏は具体例として、51ある共用施設の設置を強調する。建物の1階には住戸を置かず、「カフェ」「スポーツバー」「足湯」といった施設や店舗を入れる。

 建物にはエントランスを2カ所つくり、アクセス性を高める。それだけでなく、玄関から1階の共用施設や中庭、広場がどう見えるかまで、建築家やデザイナーに気を配ってもらう。

 緑を多くできたのは、2000台規模の地下駐車場を用意したため〔図3〕。計画都市で、これだけのスケールだからできた。地上に駐車場はなく、植栽や街路に充てた。各棟の地下は街区ごとにつながり、宅配便やごみ収集車などの動線も地下に確保した。

〔図3〕駐車場は全て建物の地下に配置
〔図3〕駐車場は全て建物の地下に配置
駐車場を地下に設け、地上には充実した共用スペースや豊かな緑を生み出した。電線も地中に埋めており、道路には電柱がない(資料:HARUMI FLAG広報事務局)
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光井 純氏(みつい じゅん)
光井純アンドアソシエーツ建築設計事務所 代表取締役
光井  純氏(みつい じゅん) 1955年山口県生まれ。78年東京大学工学部建築学科卒業。78~82年岡田新一設計事務所。82~84年イエール大学建築学部大学院修了。84~92年米シーザー・ペリ&アソシエーツ。92年シーザー・ペリ&アソシエーツ ジャパン。95年光井純アンドアソシエーツ建築設計事務所を設立し、代表取締役。ペリ クラーク ペリ アーキテクツ ジャパン代表(写真:北山 宏一)
高木 洋一郎氏
三井不動産レジデンシャル 東京オリンピック・パラリンピック 選手村事業部推進室主管
高木 洋一郎氏 (写真:北山 宏一)