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三者三様の「見られる外装」づくり

HARUMI FLAGの建物は、近くからも遠くからも大勢の人に見られる。外装デザインを担当した建築家は「近景でも遠景でも美しい」というお題を独自に解いた。

参加した建築家が語る1
PARK VILLAGE E棟・F棟
見上げて美しい斜めの軒天

安田 幸一氏(やすだ こういち)

安田アトリエ主宰

1958年生まれ。83年東京工業大学大学院修士課程修了後、2002年まで日建設計。89年イェール大学大学院修士課程修了。88~91年バーナード・チュミ・アーキテクツ・ニューヨーク事務所。2002年東京工業大学助教授、安田アトリエを設立。07年より同大学教授(写真:木村 輝)

 安田アトリエが外装デザインを手掛けたのは、PARK VILLAGEの南東に立つ2棟だ。特徴は南に面するバルコニーの軒天井である。角度を付けて、斜めにした。袖壁も住戸によっては斜めで、ファサードに立体感とリズムを与えている〔写真3〕。

〔写真3〕軒天と袖壁に角度を付けてリズムを出す
〔写真3〕軒天と袖壁に角度を付けてリズムを出す
近景は、道路から建物を見上げたときに目に入る軒天に着目した。遠景は、斜めの軒天と袖壁、手すり、外壁の素材や質感が「絣(かすり)の着物」のように混ざり合って見えることを意識している。絣とは文様織のこと(写真:北山 宏一)
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 集合住宅の外観は、見上げて眺めることがほとんどだ。そこで安田幸一氏は「きれいな軒天が目に入るようにしたい」と考えた。アルミスパンドレルを用いて、軒天を斜めにした。「少し角度を付けるだけで日が当たり、暗い裏側という感じがしなくなる」(安田氏)という。

 斜めの袖壁の向きは、住人がバルコニーからレインボーブリッジを望む海の方角に合わせた。レインボーブリッジが目の前に見えるマンションであることを袖壁で強調した。

 立面の構成は、外壁のレイヤー、斜めの軒天と袖壁のレイヤー、手すりのレイヤーの3つだ。レイヤーごとにパターンをつくり、重ね合わせた。

絣の着物を連想させる

 材料の色や質感が混ざり合い、「かすりの着物のように複雑な文様を織り成すことを目指した」(安田氏)

 手すりは、ガラス1種とアルミ縦格子2種の計3種類ある。アルミは鋳鉄ちゅうてつをイメージして黒く塗装。外壁はタイル、アルミ、プレキャストコンクリートのいずれかで、タイルはグレー系と白系の他、一部にオレンジ系を差し込んだ。

 安田氏は「(色や材質が)互いに入り込む曖昧さに、日本らしさを感じてもらいたいと思った。大きな壁面をヒューマンスケールに分節し、無味乾燥な見た目にならないようにしている」と話す。時間帯で日の当たり方が変わると影が中間色を生み、外観は様々な表情を見せる。

 2棟の外装全体の色はグレーを基調にしつつ、東端は黒色の割合を多くした。NAP建築設計事務所が外装デザインを手掛けた建物(D棟)が隣接しており、連携を意識したためだ。

 1棟単体での外装の在り方と、街全体での在り方の両方を満たすものを考えた結果がよく表れている。