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参加した建築家が語る2
PARK & SUN VILLAGE D棟
東京湾の原風景を表す竹柄

中村 拓志氏(なかむら ひろし)

NAP建築設計事務所主宰

1974年生まれ。99年明治大学大学院理工学研究科建築学専攻博士前期課程修了後、隈研吾建築都市設計事務所に入所。2002年NAP建築設計事務所を設立(写真:木村 輝)

 NAP建築設計事務所が手掛ける2棟は、PARK VILLAGEとSUN VILLAGEの2つの街区の中心広場寄りに立つ。竹のような縦ルーバーが目を引く。

 2棟は街区をまたいで離れて立つが、HARUMI FLAGの中心軸を挟んで対になっている。中心広場や道路から引いて見られることを意識した外装デザインが求められた〔写真4〕。

〔写真4〕引きで見られることを想定した外装デザイン
〔写真4〕引きで見られることを想定した外装デザイン
NAP建築設計事務所が外装デザインを手掛けた建物(右のD棟)を、中心広場付近から見た様子。左側の建物(C棟)は、三菱地所設計とサポーズデザインオフィスが担当(写真:北山 宏一)
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 竹のモチーフは、かつて東京湾で盛んだった竹柱を使った海苔のりの養殖に由来する。中村拓志氏は「人が自然と触れ合い、豊かに暮らす未来像」を思い描き、新しい「里海さとうみ」の象徴として竹柄を選んだ。縦ルーバーには町家の格子のイメージも重ねている。

 縦ルーバーは、NAPが作成・調整した竹柄をシートにプリントし、アルミのパイプに張ったもの。パイプの太さは、直径50mmまたは70mm。色合いは、濃・中・淡の3種類ある。

 これをバルコニーのガラス手すりの外側に設置した。配置の間隔には粗密がある。隔て板や柱、樋などがある所は密にしている〔写真5〕。

〔写真5〕竹柄のルーバーを粗密をもって配置した
竹柄のルーバーのパイプは、アンカーボルトで固定している。ルーバーの方向に合わせ、外壁のタイルも縦使いにした(写真:北山 宏一)
竹柄のルーバーのパイプは、アンカーボルトで固定している。ルーバーの方向に合わせ、外壁のタイルも縦使いにした(写真:北山 宏一)
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ルーバーの試作品(写真:木村 輝)
ルーバーの試作品(写真:木村 輝)
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 縦ルーバーで隔て板を隠すと、外から見たときに住戸の境目が分からなくなり、建物が1つにまとまって見える。隣の建物と見合う面も、視線を遮るためルーバーを密にした。

手すりのガラスにも竹柄

 設置方法は、スラブに打ち込んだアンカーボルトにパイプの上部を差し込み、下部を留めるというもの。「建物を道路から見上げたとき、金物が見えないようにした」(中村氏)。アンカーがずれたらパイプは真っすぐに立たないので、施工の精度が求められた。

 パイプは2本、3本、4本でそれぞれユニットにしている。ユニットは幅500mmのフラットバーに、パイプの下部を取り付けたものだ。1本タイプは見た目を調整するときに使うので、ユニットとは別に用意した。

 建物の低層部はプライバシーを守るため、手すりのガラスの間に竹柄のフィルムを挟み込んだ(写真を参照)。ガラスに落ちる竹柄ルーバーの影が倍増して見える。

 五輪後、建物の足元には竹が植えられる予定だ。中村氏は「1つのまとまりがある建物を全体で表現したい」と考え、外構に本物の竹を使うことをランドスケープのデザイン担当者に提案した。共用施設や共用部のインテリアデザインも、竹のモチーフを生かしたものになるという。

 竹柄のルーバーの他にも、外装に特徴がある。バルコニーのスラブの奥行きが長いことだ。手すりまでは1830mmで、その外側にスラブが450mmはみ出ている。これは水平方向に延びる庇を意識したものだ。