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現在もなお、「設計委託契約」が民法上のどの契約類型に当たるのかは確定していない。改正民法の施行を機に、四会連合設計契約約款は明確に「準委任契約」に当たると位置付けた改訂を行った。

 「設計図書と現場を照合する工事監理業務が『準委任契約』だとする解釈は定着した。だが設計契約には、設計図書という成果物の引き渡しを目的とする『請負契約』だという解釈が根強くある」

 そう話すのは四会連合設計約款などの改訂に関わった専門家、後藤伸一氏(ゴウ総合計画代表)だ。

 過去には「設計は請負契約」という判決が確定した例もある。工事費が発注者の想定予算を大きく超える設計図書が納品され、発注者が「債務不履行に当たる」と主張して設計料の返還を求めた裁判だ(東京高等裁判所2009年4月23日判決)。請負契約は受託者が成果物の完成義務を負う。この裁判で設計者は設計料全額の返還を命じられた。

準委任契約とは何か

 「準委任契約」とは、法律行為の事務(委任)に準じた「裁量的事務処理」を行う契約を指す。

 改正民法では委任契約、準委任契約について、規定の変更はない。変わったのは請負契約の方だ。契約不適合責任が債務不履行の一種となったことで、業務が中途終了した場合の割合報酬請求権が明文化され、その点では準委任との違いが減った〔図1〕。

〔図1〕設計者の契約とは
〔図1〕設計者の契約とは
(資料:取材に基づき日経アーキテクチュアが作成)
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 請負契約と準委任契約との違いは、請負契約が完成義務を負うのに対し、準委任契約では負わないこと。代わりに、善管注意義務を負った業務遂行が求められる点だ。計画策定の過程で困難が生じ、結果的に成果物をまとめられなかったとしても、準委任契約であれば業務報酬を請求できる〔図2〕。

〔図2〕準委任契約と請負契約の違い
準委任契約※と
解釈した場合
発注者に対し、「善良な管理者の注意」をもって委託事務を処理する義務を負う
設計図書の不備などの「債務不履行」があった場合、発注者は損害賠償を請求し、かつ契約を解除できる
請負契約
解釈した場合
設計者は発注者に対して完成義務を負う
成果物に不具合などがある場合、契約不適合責任(旧民法の瑕疵担保責任)を負う

 設計契約をこの準委任契約に位置付けるには、各契約書にその旨を記しておく必要がある。四会連合設計契約約款は、民法改正を機に実施した今回の改訂で、設計者側が損害賠償請求を受けるのは「受託者帰責に基づく債務不履行」がある場合だと明記した。

 この文言が契約書の性質を準委任契約だと位置付けている。「帰責」とは、「責めに帰すべき事由」を指し、善管注意義務違反の要件に当たる。