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熊本地震の被災地が思わぬ障害に直面しているように、復興には様々な困難が待ち受けている。被災後の状況をできるだけリアルに想定し事前に備えることこそが、最も有効な地震対策だ。ここからは、熊本地震後にまとめられた、巨大地震に備える際に役立つ指標やガイドラインを解説する。

被災した建物の性能復旧に何日かかるか──。日本建築学会は、そんな視点を盛り込んだレジリエンス性能の評価手法とBCPレベル指標を発表した。一般に説明しやすいよう、★の数でランク付けする提案で普及を図る。

 日本建築学会の「建物のレジリエンスとBCPレベル指標検討特別調査委員会」は2020年3月、建物のレジリエンス(機能維持・回復)性能とBCP(事業継続計画)レベルを定量的に評価する指標を発表した。

 レジリエンスやBCPといった言葉が建物を評価する際に使われるようなったが、共通の尺度があるわけではない。そこで、日本建築学会は委員会を立ち上げた。

 委員会では、建物の事業継続にかかわる総合的な性能を「建物のレジリエンス性能」と定義した。建物のBCPレベル指標については、建物の性能が目標水準まで復旧するのにかかる日数でレベル分けし、一般にも分かりやすいよう★の数で示した。★★★は1週間以内、★★は1カ月以内、★は6カ月以内、表示なしは6カ月以上を表している。

 「ゼネコンや設計事務所が、BCP対策を発注者に説明する際に、共通の物差しとして使うことを想定している。さらに、不動産会社などが、自社で開発したプロジェクトを一般の人々に説明する際にも利用できる」。委員長を務めた学会会長の竹脇出・京都大学教授はこう説明する。

 委員会は、建物のレジリエンス性能を定量化する考え方として、地震工学の研究者であるM. Bruneau(ブルーノ)博士による「レジリエンストライアングル」に着目した〔図1〕。地震で被災した建物の性能が、復旧するまでに要する時間をグラフに表したものだ。地震で建物の性能が低下し、時間とともに復旧してくる。この間の性能の低減量をレジリエンストライアングルと名付け、この面積を可能な限り小さくすることがレジリエンス性能を高めることと説明する。

〔図1〕被災後の復旧状況を時間軸で評価
〔図1〕被災後の復旧状況を時間軸で評価
建物のレジリエンス性能の考え方を示した図。「抵抗力」は地震による建物性能の低下を抑える力、「復旧力」は時間の経過とともに建物性能を復旧する力を表す(資料:「建物のレジリエンスとBCPレベル指標検討特別調査委員会報告書」を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 委員会は、ブルーノ博士が示したレジリエンストライアングルの図を基に「抵抗力」と「復旧力」を設定。この2つの項目を、レジリエンス性能やBCPレベル指標の評価軸とした。