政府が旧案を白紙撤回し、注目を浴びた国立競技場の整備事業。その衝撃は建築界を揺るがし、再び挑む設計・施工者たちへの重圧となった。あれから約4年。逆境を乗り越え、工期36カ月、整備費1569億円で完成を迎えた。しかし東京五輪の開催は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行で延期に。翻弄され続ける国立競技場は、建築界に何を残したのか。完成に至るまでの軌跡をたどる。

2019年11月30日に竣工した国立競技場。5階の回廊スペース「空の杜」からは、槇文彦氏設計の東京体育館や外苑の緑、新宿の超高層ビル群などが一望できる。外周にはプレストレスを導入し、プレキャスト化したSRC柱を配した(写真:吉田 誠)
2019年11月30日に竣工した国立競技場。5階の回廊スペース「空の杜」からは、槇文彦氏設計の東京体育館や外苑の緑、新宿の超高層ビル群などが一望できる。外周にはプレストレスを導入し、プレキャスト化したSRC柱を配した(写真:吉田 誠)
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約1500台のLED照明で明るく照らされた国立競技場のフィールド。全天候型トラックは合成のゴム製で400m×9レーン。芝生は天然芝で、完成の約2年前から圃場で育成してきた。南北の大型スクリーンと、2層目スタンドの先端にあるリボンボードに映像を流し、スポーツやイベントを盛り上げる(写真:吉田 誠)
約1500台のLED照明で明るく照らされた国立競技場のフィールド。全天候型トラックは合成のゴム製で400m×9レーン。芝生は天然芝で、完成の約2年前から圃場で育成してきた。南北の大型スクリーンと、2層目スタンドの先端にあるリボンボードに映像を流し、スポーツやイベントを盛り上げる(写真:吉田 誠)
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1階南側のエントランス。天井は軒庇から回り込むように木のルーバーが続く。スタンドへの動線は外部ゲートで各層のエントランスを分ける計画とし、コンコースでの上下移動を少なくした。イベントによって3層目だけ閉鎖する使い方も可能だ(写真:吉田 誠)
1階南側のエントランス。天井は軒庇から回り込むように木のルーバーが続く。スタンドへの動線は外部ゲートで各層のエントランスを分ける計画とし、コンコースでの上下移動を少なくした。イベントによって3層目だけ閉鎖する使い方も可能だ(写真:吉田 誠)
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3階「風のテラス」。蛍が飛んでいるようなイメージの「蛍線(けいせん)」をLED照明で表現した(写真:吉田 誠)
3階「風のテラス」。蛍が飛んでいるようなイメージの「蛍線(けいせん)」をLED照明で表現した(写真:吉田 誠)
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選手が通る「フラッシュインタビューゾーン」。行灯(あんどん)をイメージした照明だ(写真:吉田 誠)
選手が通る「フラッシュインタビューゾーン」。行灯(あんどん)をイメージした照明だ(写真:吉田 誠)
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配置・1階平面図
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断面図
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国立競技場

  • 所在地:東京都新宿区霞ケ丘町10-1
  • 敷地面積:約10万9800m2
  • 建築面積:約6万9600m2
  • 延べ面積:約19万2000m2
  • 構造:鉄骨造、一部鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造
  • 階数:地下2階・地上5階
  • 基礎・杭:直接基礎
  • 高さ:地盤面(TP+25.09m)から最高高さ 47.35m
  • 発注者:日本スポーツ振興センター
  • 設計・施工者:大成建設・梓設計・隈研吾建築都市設計事務所共同企業体
  • 設計期間:2016年2月~17年1月
  • 施工期間:2016年12月~19年11月
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