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国立競技場は工期順守を最優先とするプロジェクトだった。本当に五輪に間に合うのか。そうした世間の不安を拭うべく、設計・施工担当者らは準備を徹底して難事業に挑んだ。

晴れた日には、スタンドを覆う大屋根から、観客席に日の光がこぼれる。天然芝を育成するために、屋根南側の一部だけガラストップライトを設け、自然光を採り入れている。観客席は「木漏れ日」をイメージして5色の椅子をランダムに配置。その配列には「グラスホッパー」を使用した(写真:吉田 誠)
晴れた日には、スタンドを覆う大屋根から、観客席に日の光がこぼれる。天然芝を育成するために、屋根南側の一部だけガラストップライトを設け、自然光を採り入れている。観客席は「木漏れ日」をイメージして5色の椅子をランダムに配置。その配列には「グラスホッパー」を使用した(写真:吉田 誠)
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 青空の下、国立競技場のフィールドで竣工式が開かれた〔写真1〕。工期は36カ月。発注者の日本スポーツ振興センター(JSC)が公示段階で2020年4月末としていた事業期限よりも5カ月前倒ししたスケジュールだ。施設の規模からすれば、異例のスピードといえる。

〔写真1〕華々しく開かれた竣工式
〔写真1〕華々しく開かれた竣工式
2019年12月15日に開かれた竣工式。左側から順に隈研吾氏、梓設計の杉谷文彦社長、大成建設の山内隆司会長が並ぶ(写真:吉田 誠)
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 新しい国立競技場は地下2階・地上5階建てで、延べ面積は約19万2000m2。水平ラインを強調する軒庇には木材をふんだんに使い、約60m跳ね出した大屋根で約6万席のスタンドを覆った。

 完成後は19年12月にオープニングイベント、20年1月にサッカーの天皇杯決勝戦などで利用され、多くの観客を沸かせた。

 夏には東京五輪のメインスタジアムとして使われる予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で五輪は延期となった。世界に披露できる機会は少し先になりそうだ。