国立競技場は工期順守を最優先とするプロジェクトだった。本当に五輪に間に合うのか。そうした世間の不安を拭うべく、設計・施工担当者らは準備を徹底して難事業に挑んだ。
青空の下、国立競技場のフィールドで竣工式が開かれた〔写真1〕。工期は36カ月。発注者の日本スポーツ振興センター(JSC)が公示段階で2020年4月末としていた事業期限よりも5カ月前倒ししたスケジュールだ。施設の規模からすれば、異例のスピードといえる。
新しい国立競技場は地下2階・地上5階建てで、延べ面積は約19万2000m2。水平ラインを強調する軒庇には木材をふんだんに使い、約60m跳ね出した大屋根で約6万席のスタンドを覆った。
完成後は19年12月にオープニングイベント、20年1月にサッカーの天皇杯決勝戦などで利用され、多くの観客を沸かせた。
夏には東京五輪のメインスタジアムとして使われる予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で五輪は延期となった。世界に披露できる機会は少し先になりそうだ。