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スケール感を原寸模型で補う

 3次元で検証を重ねていくと、思わぬ弊害が生じた。「スケール感を見失う」ことだ。これを補完するため、模型で細部を詰めた〔写真34〕。

〔写真3〕3次元モデルで解いた納まりを模型で確認
〔写真3〕3次元モデルで解いた納まりを模型で確認
模型を用いた打ち合わせの様子。構造設計者をはじめ、鉄骨ファブリケーターや鉄骨の製作を担った技能者、施工管理者など、様々な立場の視点が入るようにした。施工性などを確認し、その場でものづくりの細部を詰めた(写真:戸田建設)
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〔写真4〕ウェブとフランジを傾けて製作
〔写真4〕ウェブとフランジを傾けて製作
完成したコーナー部分のブラケット。「ウェブとフランジが直角でないため、鉄工所の職人ですら、2次元の図面からこの完成形をなかなかイメージできなかった。3次元データの連携がなければ製作は難しかったはずだ」と、加藤組鉄工所の加藤敦史専務(写真:加藤組鉄工所)
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 模型はTeklaから出力した原寸図を基に作成し、現場で溶接部が見えるか、手は届くかなどを確認。鋼板の切り込み幅など、構造設計者がその場で判断していった。

 日建設計で構造設計を取りまとめた向野聡彦エンジニアリングフェローは、こう指摘する。「BIMは迅速に問題意識を共有し、チームプレーで解決していくための手段の1つ。その前提となるのが、人間の創造力であり専門家同士の協働だ」

 施工手順の確認にもBIMが一役買った。断面形状が複雑で、設備や部材が混み合う外装部分では、気密ラインや雨水排水の検討などに“ワンスパンモデル”を活用している〔図2〕。

〔図2〕ワンスパンモデルで施工手順を共有
〔図2〕ワンスパンモデルで施工手順を共有
外装部のワンスパンモデル。施工手順の検討の合理化につなげた。10社以上の部材メーカーや専門工事会社など、関係者と情報共有したことで、各社がスムーズに部材製作図に進むことができた(資料:戸田建設)
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 戸田建設で同タワーのフロントローディング(施工計画の前倒し)に携わった藤井健男氏は、「基準階の一部分のみを3次元で詳細化し、施工手順を可視化した」と説明する。

 地下工事や鉄骨の建て方などでも手順ごとにモデルを作成し、専門工事会社などと共有した。同現場で副所長を務めた庄司大輔氏は、「2次元図面だけの従来と比べると、施工管理や変更点の確認作業などにかかる手間が、半分以下に減った感覚だ」と、手応えを語る。

 戸田建設はここでの実績を生かし、同社本社ビルの建て替えで設計・施工一貫BIMに発展させ、さらなる活用に挑む。

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