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 旧ビル創建時に重視された先進性を、現代に引き継ぐ─。2019年7月に東京・京橋で竣工した「ミュージアムタワー京橋」では、発注者から求められた、このテーマの実現にBIMが力を発揮した。

 高さ約150mの同タワーは、1951年に竣工したブリヂストンビルの建て替えだ。低層部に「アーティゾン美術館」、高層部にオフィスが入る。設計を日建設計、施工を戸田建設がそれぞれ手掛けた。

 南側に隣接して、戸田建設の本社ビルの建て替え計画「新TODAビル(仮称)」が進み、街区一体で都市再生特別地区が適用されている。

 日建設計設計部門の矢野雅規ダイレクターアーキテクトは、次のように説明する。「特区プロジェクトは、行政協議などで与条件を整理しながら検討を重ねていく。全てをBIMモデル化していては、変化に追従しきれない。ここではコミュニケーションのツールとして、限定的にBIMを使った」

 3次元での検討が必須だったのが塔屋部分。「グローバル(地球・世界)」をモチーフに球体で切り抜いたようなデザインとした〔写真12〕。矢野ダイレクターアーキテクトは、「超高層頂部の曲線を躯体そのもので描き、発注者が求める新しい時代の建築を象徴的に表現した」と語る。

〔写真1〕球体で切り取ったような曲線描く塔屋鉄骨
〔写真1〕球体で切り取ったような曲線描く塔屋鉄骨
「ミュージアムタワー京橋」の塔屋部分。外周の鉄骨はそれぞれ異なる曲線を描き、梁の勾配や長さも様々だ。全面的にさび止めの溶融亜鉛めっき仕様で、納まりの決定に際しては、めっき割れやめっきだまりとならないよう、配慮する必要もあった(写真:藤井 浩司)
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〔写真2〕エリアに新たなスカイライン創出
〔写真2〕エリアに新たなスカイライン創出
西側から見下ろす。JR東京駅から八重洲通りを5分ほど歩いた場所に立つ。球体で切り取ったような建物頂部のデザインは、新たなスカイラインの創出を意図した。発注者は永坂産業と石橋財団(写真:野田 東徳/雁光舎)
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