全1290文字
意匠設計者が空間や建物の形を検討し、構造設計者が構造上成り立つか、安全かを検証する─。基本計画で形が変わる度に繰り返すこの一連のフローを、プログラムを使って自動化することで手間を減らし、木構造の屋根がカテナリー(懸垂)曲線を描く無柱空間を実現した。
木造2階建ての「武庫川女子大学カヌー部部室棟」は、兵庫県西宮市と尼崎市の間を流れる武庫川から約200m西側に立つ〔写真1、2〕。部員約30人が週6日、カヌーを1階の艇庫から運び出し、武庫川で練習。部室棟2階ではトレーニングに励む。
設計を担当した竹中工務店大阪本店設計部設計第3部門設計1グループの天野直紀氏が重視したのは使いやすさだ。前面道路の幅は約8mで、最長11mのカヌーをスムーズに搬出入する必要がある。そこで1階は正三角形グリッドの交点にカヌー台を兼ねる柱が立ち並ぶ平面とし、道路に対して斜めにカヌーを置くことにした。
2階はトレーニングルームで、動きやすい大空間が必要だ。建物の高さ制限が10mのため、木造で長大スパンを確保する場合に通常用いるトラス梁や張弦梁では、屋根から梁下端までの高さが必要で天井高さが低くなる。そこで、面的に強い形状である三角形グリッドを利用。カテナリー状に木の梁が垂れ下るのを外周の部材で引っ張ることで2階の柱を無くした。梁せいは圧迫感がないように最大390㎜に抑えた〔写真3〕。