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BIM活用にはコストがかかり、大規模プロジェクトでないとメリットがない――。そう考える中小規模の設計事務所は少なくないだろう。しかし、自社の設計スタイルに合わせてBIMを導入し、効果を上げている例もある。

 所員数約45人という規模で、BIM導入10年目の設計事務所がある。宇都宮市に本社を置くAIS総合設計は、BIM活用事例が増え始めた2010年にBIMを導入した。近い将来、普及すると予測しての経営判断だった。

 当初はパース作成のためだけに使うこともあったが、14年から全物件の基本設計で活用し始めた〔図1〕。だが、「本格的なBIM活用までの道のりは長い」と同社の佐々木宏幸代表は話す。地方の施工者や発注者のBIM対応が進んでいないからだ。

〔図1〕設計BIMで作業の効率アップ
〔図1〕設計BIMで作業の効率アップ
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 BIMは設定が複雑で、十分な知識がないと作業の効率化につながりにくい。そこで、定期的に本社と東京事務所が共同で勉強会を開いている。内容は図面作成時間の短縮につながる技や便利な機能の紹介などが中心だ。こうした社内勉強会やオンライン教材を活用することで、主に設計実務で手を動かす20人ほどがBIMを使いこなし、管理職クラスがモデルを確認する操作ができる体制を築いている〔写真1〕。

〔写真1〕テレビ会議でBIM勉強会
〔写真1〕テレビ会議でBIM勉強会
全モニターに操作画面を映し、テレビ会議で担当者が説明する勉強会の様子。この日のテーマは階段。設定項目が多く、挙動が複雑で、正確につくるためには知識が必要だ(写真:AIS総合設計)
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作業の時短につなげる

 BIMは設計初期の高さ関係の検討で特に有効だという。例えば傾斜した敷地では国土地理院が一般公開している敷地の3次元データを取り込んで利用する。同社建築部ディレクターの小林孝宏執行役員は「プロポーザルなどの短い時間で進めなくてはいけない案件でも、2次元CADよりもスムーズに複数の案が作成できる」と説明する。

 あらかじめ設定した項目の数量を自動で算出するBIMの機能も有効だ。特に公共建築の設計業務では、発注時の仕様書で用途ごとの面積が示され、それに近い設計を求められる。変更する度に面積を数え直す手間がなく、効率化につながる。

 一方、BIMの弱点は図面の表現密度が薄い点だ。BIMモデルから出力した一般図は多少の加筆が必要になる。とはいえ、BIMの強みである3次元表現による分かりやすさが意思決定のスピードを上げ、トータルでの手間削減につながっている。

 BIMを活用した高度なプログラムやシミュレーションとの連携については実績が少なく、課題の1つだ。