建物の設計から運用まで、BIMを通じて建物の情報を一貫利用するのが理想だ。しかし、施工BIMは維持管理で必要以上の情報量を持ち、連携につながりにくい。設計時のBIMデータを基に、施工時の設備データなどを取り込めば一貫利用につなげやすい。
2020年5月末に竣工予定の建材商社、エービーシー商会の新本社で、安井建築設計事務所(以下、安井事務所)が開発した建築マネジメントシステム「BuildCAN(ビルキャン)」が初めて導入される。IoT環境センサーとBIMを連携させたものだ〔図1〕。
エービーシー商会の本社が立つ敷地は、東京・赤坂の外堀通り沿いに位置し、神社や公開空地の緑に囲まれる恵まれた環境だ。しかし、旧社屋は開口部が少なく、近隣の緑が見えにくい閉鎖的な建物だった。また、中心のコアでオフィススペースが分断され、社内の一体感が欠けていた。建物の老朽化に伴い、エービーシー商会は現地建て替えを決定。安井事務所が設計を担当した。
新本社は地下1階、地上9階建てで、地上1~3階にはショールームと100席超の大会議室が入る。4~9階はオフィスフロアで、社内のコミュニケーションを活性化するために、コアを片側に寄せて広い執務スペースを確保した。また、コアの反対側に階段室とコミュニケーションスペースを設け、フロア間のつながりも重視している〔図2、3〕。
環境面では、階段室を利用する自然通風システムや空調効率が高い居住域空調の採用などで、一次エネルギー消費量基準(BEI)を0.5以下に抑えた。BuildCANを使えば、こうした省エネ効果をさらに高め、運用や維持管理の効率を向上することができる〔図4〕。