政府の緊急事態宣言を受け、神奈川県は休業要請の対象となったインターネットカフェの滞在者向けに県立武道館を開放した。坂茂氏が考案した間仕切りシステムが、ネットカフェ難民の仮の住まいとなった。
神奈川県は4月11日から5月6日まで、県立武道館を「ネットカフェ難民」の受け入れ場所として一部開放した。ここで活躍したのが、建築家の坂茂氏が考案した紙管の間仕切りシステムだ〔写真1〕。
要望に応じて最大90室程度まで用意できる態勢を整えた。期間中、延べ125人(男性113人、女性12人)が利用した。
神奈川県くらし安全防災局の青木淳・企画調整担当課長は、「紙管は思っていたよりも軽く、組み立てやすい。カーテンで仕切るとプライバシーを確保できるうえ、飛沫感染予防にもなるので、利用者も安心して過ごしていた」と説明する。
2011年の東日本大震災や19年の台風19号など、自然災害が起こるたび、避難所に紙管の間仕切りシステムを設置してきた坂氏。新型コロナウイルスへの対応も素早かった。
坂氏が県に対して間仕切りシステムの設置を申し出たのは、緊急事態宣言発令の翌日である20年4月8日。居場所を失う人が出ることに危機感を覚えていた県との間ですぐに話がまとまり、約1週間後の14日には34ユニットを組み立てた。