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「アパホテル&リゾート横浜ベイタワー」に新型コロナウイルス感染症の軽症者などを受け入れたアパグループ。元谷外志雄代表が明かした経緯とコロナ後の宿泊需要との向き合い方などをインタビュー形式でお伝えする。

元谷 外志雄(もとや としお)
元谷 外志雄(もとや としお)
1943年生まれ。石川県立小松高等学校卒業後、小松信用金庫(現北陸信用金庫)に入社し、慶応義塾大学経済学部通信教育部に入学。9年後に退社し、アパグループの前身となる注文住宅会社「信金開発」を創業。分譲マンションにも事業を拡大し、84年にホテル事業へ参入。妻の芙美子氏はアパホテル社長を務める(写真:日経アーキテクチュア)
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感染者の受け入れを決めた経緯を教えてください。

 政府から4月2日に感染者の受け入れについて打診がありました。国難と言えるこの状況下では、ホテルチェーンのリーディングカンパニーとして打診を断るわけにはいかないと判断し、「受け入れたい」と即答しました。

 その後、4月6日に神奈川県の担当者から横浜ベイタワーの支配人に対して具体的な打診がきました。そこで、私が示した全体方針に従って、このホテルでの受け入れを決めたのです〔写真1〕。

〔写真1〕2019年開業の旗艦ホテルに患者を受け入れた
〔写真1〕2019年開業の旗艦ホテルに患者を受け入れた
新型コロナウイルスの無症状者や軽症者を受け入れる「アパホテル&リゾート横浜ベイタワー」。期間は4月20日~8月末の予定だ。同ホテルは2311室の客室を備える(写真:日経アーキテクチュア)
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部分ではなく、1棟貸しです。

 そうですね。仮にホテルの一部を提供し、他の部屋が空いていたとしても一般のお客さんを泊めるわけにはいきません。ですから1棟貸しとしています。

 客室の提供に当たっては、ホテルのスタッフが感染しないように条件を付けています。スタッフは電話やメールなどの応対をしますが、感染者を受け入れる業務は担いません。

宿泊業に逆風が吹き荒れるなか、感染者の受け入れによる収入は、ばかにならないのでは。

 確かにそのような側面はありますが、一方で感染者の受け入れには風評被害のリスクを伴います。例えば、新型コロナが終息して一般の宿泊客の受け入れを始めたときに、感染者が宿泊していたホテルとして敬遠される恐れがある。

 実際、近隣の住民からは「受け入れないでほしい」という声がありました。それに対して当社は、近隣住民に感染する心配はないと説明しています。患者が住民と近距離で触れ合う機会はありませんから。新型コロナウイルスの主な感染経路は飛沫感染と接触感染です。

 クレームは次第に減っています。ホテルへの感染者受け入れが、社会的に必要であるという認識が広まってきたのではないでしょうか。