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この数年、活況を呈してきた建設市場が、コロナ・ショックで暗転しそうだ。影響は建築需要の量的な減少にとどまらない。外出自粛や在宅勤務を経験したことで、発注者や利用者のニーズが激変する可能性がある。

 2017年を境に緩やかに減少し、19年は前年比2.7%減の1億2756万m2だった建築物着工床面積。20年以降も同様の傾向が続くとみられていたが、新型コロナウイルスの感染拡大で状況は一変しそうだ〔図1〕。

〔図1〕2020年の着工床面積は23%減に?
〔図1〕2020年の着工床面積は23%減に?
2020年はサトウファシリティーズコンサルタンツの予測。コロナ・ショックは個人消費と民間設備投資の両方を押し下げる。建築需要はリーマン・ショック時を下回る水準まで落ち込む恐れがある(資料:国土交通省の資料とサトウファシリティーズコンサルタンツの予測を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 建築のコストマネジメントを専門とするサトウファシリティーズコンサルタンツ(SFC)の佐藤隆良社長は、「20年の建築物着工床面積が19年比23%減の9840万m2まで一気に落ち込む恐れもある」と試算する。感染症が7~9月期にほぼ終息すると仮定し、経済活動の停滞による景気の悪化を見込んで算出した値だ(試算の詳細は「コロナ・ショックの影響は深刻 20年の建築需要は23%減と予測」を参照)。

 終息時期を見通すのは困難なため、影響を推し量るのには限界があるが、佐藤社長が予測するように、コロナ・ショックは建築需要に深刻な負のインパクトをもたらす公算が高い。ただし、建物用途別に市場を読み解くと、少し違う景色も見えてくる。

 日経アーキテクチュアはSFCや不動産サービス大手のシービーアールイー(CBRE)、経営コンサルティング会社のA.T.カーニーなどへの取材を基に、用途別の「天気図」を作成した〔図2〕。主に新築工事の需要を念頭に20年以降(おおむね1~2年後)の建築市場の景況感を予想したものだ。この天気図を見ると、用途によってかなり濃淡があることが分かる。

〔図2〕アフターコロナの市場を建物用途別に予想
〔図2〕アフターコロナの市場を建物用途別に予想
2020年以降(おおむね1~2年後)の建築市場の景況感(予測)。「コロナ・ショック」以前のトレンドと比較し、建築需要がどのように変化するか、取材に基づき日経アーキテクチュアが予想した(資料:取材を基に日経アーキテクチュアが作成)
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