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高密度な都市構造に疑問の声が上がるなかで、「失敗する巨大開発が現れる可能性がある」とみる。多くの都市再生事業に関わる内藤廣氏に見えている、アフターコロナの建築と都市とは(インタビューは5月1日に実施)。

内藤 廣(ないとう ひろし)
内藤 廣(ないとう ひろし)
1950年神奈川県生まれ。74年早稲田大学理工学部建築学科卒業。76年同大学大学院にて吉阪隆正に師事、修了。スペイン・マドリードのフェルナンド・イゲーラス建築設計事務所、菊竹清訓建築設計事務所を経て、81年内藤廣建築設計事務所設立。2001年東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻助教授、02〜11年同教授。10〜11年同大学副学長。11年同大学名誉教授(写真:山田 慎二)
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新型コロナウイルスとの戦いを経験して、建築や都市はどのように変わるでしょうか。

 私もまだ、建築や都市がこれからどう変わるか漠然とした予想しかできません。その前提でお話しします。

 まず、既存の人口予測では、東京圏の人口は今後30年変わらないとされている。この予測が新型コロナウイルスによって極端に変わるかといえば、そうじゃないでしょう。東京圏というくくりでは、人口はそれほど変わらない。

 ただ、その内側の構造はひょっとすると変わるかもしれない。山手線の内側や周辺にこれだけの都市機能が集まる構造が、果たして正しいのか。

 仕事がオンラインに切り替わるなか、「なぜ超高層のガラスの箱に入り、完全空調の密閉空間で過ごさなければならないのか」と考える人が増えれば、都心への集中にブレーキがかかる。

 これまで再開発事業が一定程度うまくいっていたのは、超高層に対して「かっこいい」という憧れや、企業ブランドにつながる価値があったから。要するに需要ですよ。

 当然ですが、需要が減れば値段は下がる。すると、デベロッパーのビジネスモデルは壊れますよね。プロジェクトファイナンスは、初期投資と利回りから成る単純な図式ですから。床貸しの値段が下がれば、このモデルは崩壊するはずです。そうなると、既に動いている案件の中で、失敗する巨大開発が出てくる可能性がある。