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コロナ・ショックを経て、建設業界にもデジタル化の波が押し寄せそうだ。キーワードは「デジタルツイン」。これまで難しいとされてきた施工管理のテレワークを実現する技術やサービスが出そろってきた。

 建設業で働く人のテレワーク実施率は23.3%で、全業種の平均よりも4.6ポイント低い──。人材サービス大手パーソルグループのシンクタンク、パーソル総合研究所が緊急事態宣言の発令後に実施した調査では、建設業のデジタル化の遅れが如実に浮かび上がった〔図1〕。

〔図1〕建設業のテレワーク実施率は全業種の平均以下
順位 業種 従業員の
実施率(%)
会社からの推奨・
命令率(%)
調査サンプル数(人)
1 情報通信業 53.4 73.5 (1898)
2 学術研究、専門・技術サービス業 44.5 58.2 (188)
3 金融業、保険業 35.1 51.3 (1468)
4 不動産業、物品賃貸業 33.5 51.7 (490)
5 電気・ガス・熱供給・水道業 30.8 50.7 (334)
6 製造業 28.7 44.0 (6592)
7 生活関連サービス業、娯楽業 24.4 28.0 (404)
8 教育、学習支援業 23.9 35.9 (393)
9 建設業 23.3 37.9 (1463)
10 卸売業、小売業 21.1 32.5 (2115)
11 宿泊業、飲食サービス業 14.5 17.2 (468)
12 運輸業、郵便業 12.1 20.3 (1469)
13 医療、介護、福祉 5.1 6.9 (1633)
その他のサービス業 31.7 43.4 (2182)
上記以外の業種 36.1 45.1 (1380)
  全体 27.9 40.7 (2万2477)
調査実施期間は4月10日~12日で、対象は正社員のみ。サンプル数は性別・年代の補正のためのウェイトバック後の数値(資料:パーソル総合研究所の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)

 調査は7都府県に緊急事態宣言が発令されたことを受けて、4月10日~12日に実施。様々な業種から正社員2万2477人が回答した。

 建設業の回答者のうち、施工管理や設計に携わっている技術職のテレワーク実施率は26.3%。現場の職人などが5.9%だったのに比べるとさすがに実施率は高いが、それでも全業種の平均より低い水準だ。

 この調査で「テレワークを実施していない」と回答した施工管理・設計系の技術職に理由を尋ねると(複数回答)、「テレワークで行える業務ではない」が45%で最も多かった。

 施工管理のテレワークは無理難題なのか。答えは否。大勢の技術者が現場に張り付かなくても、工事の進捗を管理したり、情報を共有したりする技術やサービスが、急速に進化している。キーワードは、現実世界を精緻にモデル化し、仮想空間に再現して活用する「デジタルツイン」だ。