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コロナ禍の影響は、人材育成の面にも及んでいる。顕著な1つとして、例年は新入社員を一堂に集めていた研修の実施が難しくなった。建設各社はオンラインツールを活用した研修にかじを切った。

 2020年春、各企業は入社式や新入社員研修の方法を急きょ見直す必要に迫られた。4月には多くの企業が在宅勤務に移行し、その場合は新入社員も自宅待機を余儀なくされた。研修の方法は講義型と体験型に大別できるが、今期の新入社員研修では特に、講義型をオンライン化に移行させざるを得なくなった。

 新型コロナウイルス感染症が企業の新入社員研修に与える影響に関しては、企業内人材育成の内製化を支援するカレイドソリューションズ(東京都新宿区)が調査を実施している。業種を問わず対象としたものだ(調査期間は20年3月24日~25日、回答は53社)。

 新入社員が少ない場合もあるため、同調査によると研修は「これまで通り」とする回答も4割強に上る。それ以外は「在宅のウェブセミナー」「eラーニング」が3割強。「集合のウェブセミナー」「拠点・部署単位で分ける」「同じ会場で小集団に分ける」などが2割強あった(複数回答あり)。

既存の研修コンテンツ活用も

 日経クロステックの調査によると、建設業でも新入社員研修はオンライン化で対応した様子が分かる〔図1〕。

〔図1〕建設各社もオンライン会議システムやeラーニングを活用
〔図1〕建設各社もオンライン会議システムやeラーニングを活用
新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて建設会社が実施した、新入社員研修に関する対応。日経クロステックによるアンケート調査を基に作成。2020年5月7日までに回答のあった22社からの回答のうち、代表的なものを選んで記載した(資料:日経クロステック)
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 安藤ハザマは、新入社員94人を集めて実施する予定だった社内講師による研修を映像に収録。動画を配信し、在宅で閲覧できるようにした。安全衛生や情報セキュリティー、人権啓発など、職種にかかわらず知っておくべき内容を扱った〔図2〕。

〔図2〕自宅受講用に講義の録画も配信
〔図2〕自宅受講用に講義の録画も配信
安藤ハザマが新入社員研修のために新しく作成した講座の一部。社内講師による講義を撮影し、自宅でも受講できるようにした(資料:安藤ハザマ)
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 この他、ビジネスマナーなど社会人として必要な知識に関するeラーニングの教材を新たに作成し、自宅で学ばせている。講義を依頼する予定だった企業に製作を委託した。

 大林組は、4月14日の配属日までは新入社員約300人に自宅待機を命じた。その期間中は、集合研修での座学に代わり、研修を委託した企業が提供するオンライン講座で、ビジネスマナーなどを教えた。

 配属日以降は、新入社員全員にノートパソコンとタブレットを配布。配属先の事業所の状況に合わせて実施するテレワークで活用してもらっている。例年、タブレットは工事現場に配属する社員を中心に配布していたが、20年度は経理や人事も含めた新人全員に配った。

 「苦肉の策として新たにeラーニングの会社と契約した」と話すのは、土木を主体に建築工事なども手掛ける加藤建設(愛知県蟹江町)ゼネラルマネジメント室の林邦佳主任だ。加藤建設の場合、新入社員17人を自宅に待機させる期間があった。eラーニングの他、2年目の社員に配布してきた資格試験用のテキストを課題として渡し、自習してもらった。

 既存の研修コンテンツの活用も一手段となった。パシフィックコンサルタンツでは、中途採用者向けに作成していた社内規定などを学ぶeラーニングを、新入社員向けに転用。コンピューターソフトの操作方法やビジネス文書の書き方を学ぶ通信講座なども取り入れている。