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CLTは面剛性が高く、国内では最大で幅3m×長さ12mのパネルが製作できる。接合部の資料は少ないが、大判材は意匠設計者や構造設計者の創造力をかき立てる。60m近い大スパンの格子屋根、折板状の大屋根など、特性を引き出した例を集めた。
面剛性の高い大判のCLT(直交集成板)を組み合わせていくと、大スパンの架構をつくることができる。そんな着想から設計したCLTの大空間が登場した。施工の難易度が高く、事前に入念な検討を重ねた。
東京都江東区に2020年6月8日、大東建託の「ROOFLAG(ルーフラッグ)賃貸住宅未来展示場」がオープンした。建物のエントランスを兼ねたアトリウムを、CLTで組んだ巨大な架構が覆う〔写真1〕。高さが2.3mあるCLTの梁を128枚組み合わせて、斜辺の長さが56.5mの直角三角形の架構を形成。その直角三角形全体を、北向きに傾けて架け渡している。ダイナミックな木の架構は、ファサードの全面ガラスを透かして前面道路からもよく見える〔写真2〕。
「大判のCLTは、剛性の高い大断面の梁として使える。部材の面内剛性が高いから、部材同士も剛に近い接合強度でつなぐことができ、大スパンの架構が可能になる」。この建物を設計したマウントフジアーキテクツスタジオ(東京都渋谷区)共同主宰で、芝浦工業大学教授の原田真宏氏は、CLTの大架構を着想した背景をそう説明する。