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北側は本来の外壁線の外側にガラス面をつくり、CLTの床が突き出て庇となったように見せている〔写真1、2、図2〕。内部はCLTや柱、筋交いを、できる限り現しにした〔写真3〕。
〔写真1〕木造の構成部材を町に対して見せる
敷地は小高い丘の上にあり、北側に住宅地が広がる。木造校舎が町の風景に寄与することを狙い、北面は外からガラス越しに柱と筋交いが見えるようにした。内部は、1日を通して明るさが安定している北側に教室と実習室を配置した(写真:艸建築工房)
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〔写真2〕CLTの持ち出し庇と、ガラスや木で軽やかな表情
上階への延焼抑制のために必要な庇は、CLTを強軸方向に延ばす形で設け、通常の庇の作業手間を減らした。V字形の筋交いは、場所によって斜めの線が1階から3階までつながってダイナミックに見える(写真:艸建築工房)
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〔図2〕ディテールから解く架構
意匠性と機能性を両立する北面
住宅地への顔となる北面は、構造体の40cm外側にあえてガラス面を設けている。意匠性と同時に機能性を高めるためだ。ガラス面により、すっきりとした見た目にする一方、欄間部分はビル用サッシを取り付け、換気のために開閉できるようにしている
1枚のCLTで庇を実現
A部断面詳細図 CLTの床割り付け段階で、北側は強軸方向の向きを、庇を出す方向に変えている。これにより複数の部材を使うことなく、施工手間を省きながら庇を設けた。庇は筋交いから伝わる応力を伝達する役割も担う
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シンプルなカーテンウオール
北西コーナー部平面詳細図 欄間の下部分は、方立にしゃくり込みを入れてガラスを固定した。「木造でよくやる作法」と横畠氏。開閉はできないが、ガラスの交換は可能
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柱の外側にガラス面
構造体の外側にガラス面を設けたことで、柱上部の大きな梁は外からは直接見えない。写真は欄間部分のサッシを開けたところ(写真:長井 美暁)
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〔写真3〕木の温もりが感じられる教室と実習室
1時間耐火のために、壁のCLTは燃えしろ設計を行い、天井は不燃化。教室と実習室は高さを確保するため、梁の間に木下地を吊り、グラスウールと強化石こうボードを取り付け、曲面施工できる石こうボードで仕上げた(写真:艸建築工房)
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CLTは、国内では最大3m×12mまで製造できる。「大判でつくれる材料は、大判らしく使いたい」と考えていた横畠氏は、3階建てなら12mがぴったりだと、壁面にCLTを3層通しで使うことにした。
この校舎では、大スパンの実習室も求められた。9.4m×22mの実習室を柱のない空間とすると、耐力壁を22m飛ばすことになり、水平剛性を負担する部材が必要になる。
CLTの特性を生かせば、少ない継ぎ手で水平剛性を高めたうえで、水平力を耐力壁に伝達することができる。このような構造計画を考え、構造設計者の佐藤孝浩氏(桜設計集団)に相談した。CLTを大判で使うことで施工性も向上すると見込んだ。
最終的に用いたCLTは幅2.2m。トラックの荷台内側に平積みできる寸法だ。壁面は長さ11.5m、厚さ150mmのパネルを現場で2枚張り合わせた。床面は、教室は11m、実習室は10mと6mにした。庇を含め、横畠氏は「適材適所」と言う。