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大きな空間を持つ木造は、柱・梁と耐震要素をどう組み合わせるかが重要だ。住友林業の研究施設では、LVLを積んだ耐震フレームで無柱の大空間を支え、長門市庁舎ではRC造のコアで木造を挟むことなどで柱・梁の寸法を抑えた。

分厚いLVL(単板積層材)を積み上げて強固な耐震フレームを築く「木造ポストテンション構造」を採用。燃えしろ設計などで、構造を意匠としても見せる大空間を実現した。千鳥状の耐力壁は中庭の緑も取り込む。

 植栽を施した3層吹き抜けのインナーコートヤード(中庭)に沿って、市松状の開口部を持つ木の壁が続いている。その開口を介してインナーコートヤードとつながった壁の反対側は、オフィスやギャラリーなどの無柱の大空間だ〔写真1、2〕。この壁は、ブロック状の分厚いLVLを市松状に高さ12mまで積み上げたもの。1つのLVLブロックは、立面が1200mm角、厚さは390mmある。

〔写真1〕市松状にLVLブロックを積む
〔写真1〕市松状にLVLブロックを積む
建物中央の3層吹き抜けのインナーコートヤード。両側に、厚さ390mm、立面1200mm角のLVLブロックを市松状に積み上げた耐力壁が続く。建物は、燃えしろ設計による1時間準耐火建築物。LVLブロックの両面に45mmずつ燃えしろ層を設けて、現しとした(写真:住友林業)
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〔写真2〕7.2m×31mの木造大空間
〔写真2〕7.2m×31mの木造大空間
1階エントランスに隣接するギャラリーは、奥行き7.2m、間口31mの大空間。インナーコートヤードとの間に、市松状のLVLブロック耐力壁が立つ。全館避難安全検証の大臣認定により内装制限を緩和し、カラマツ集成材の梁や、CLTの天井を現しとしている(写真:住友林業)
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 市松状に積んだLVLブロックの壁は、剛性の高い耐力壁だ。上下に重ねたブロック同士の接合に構造用金物は使っていない。LVLブロックを積み上げた後、鉛直方向に直径40mmの鋼棒を貫通させてプレストレスをかけ、ブロック同士を“圧着”している。「木造ポストテンション構造」と呼ばれるもので、圧着によってブロック全体を一体化し、強固な耐力壁をつくる仕組みだ。

 「木造ポストテンション構造は、事務所などの大空間でも、剛性の高い木構造をつくれるメリットを持つ。当社の住宅建材などに使っているLVLを用いた木造ポストテンション構造の新しい技術を開発する目的でこの建物をつくった」。そう話すのは、住友林業新事業戦略開発室中大規模木造建築グループのグループマネージャーを務める熊川佳伸氏だ。建物の建設を取りまとめた。