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5階建ての大規模木造を、使い勝手のよいスパン割りで実現するために、耐火集成材による柱・梁のスリム化を図った。様々な検討の結果、設計で取り入れたのは、免震化と混構造、合成梁の3つの技術だ。

 山口県長門市の新しい庁舎に入ると、木の柱・梁に囲まれた5層吹き抜けのロビーが広がる〔写真1〕。柱や梁に使っているのは、耐火の大臣認定を取得したスギの大断面集成材だ。長門市はこの新庁舎を、2019年9月に使い始めた。その後、敷地内にあった旧庁舎の解体や駐車場整備などを進め、20年6月に新庁舎全体の竣工を迎えた〔写真2〕。

〔写真1〕5層吹き抜けの木造大空間
〔写真1〕5層吹き抜けの木造大空間
庁舎に入ると広がる5層吹き抜けのロビー。広さは12.8m×8m。木造の柱・梁は、大臣認定を取得した耐火集成材。2時間耐火となる1階の構造柱の太さは660mm角、梁は高さ950mm、幅380mm。柱・梁とも、その外側に厚さ21mmの強化石こうボード3枚、さらに仕上げ材のスギで被覆してある(写真:時空アート)
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〔写真2〕5階建ての本体建物と木造平屋の2棟で構成
〔写真2〕5階建ての本体建物と木造平屋の2棟で構成
南西側から見下ろした全景。地上5階建ての庁舎本体(中央)と木造平屋のエントランス棟から成る。写真は2019年秋の竣工時に撮影。その後、左手の旧庁舎を解体し、駐車場などを整備した(写真:時空アート)
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 新庁舎は一体的に利用されている2つの建物から成る。1つは地上5階建て、延べ面積約7000m2の庁舎本体。東西にある鉄筋コンクリート(RC)造のコア部分で、真ん中の木造部分を挟んだ混構造だ。基礎免震を取り入れている。もう1棟は、庁舎本体の1階西側に、防耐火上の「別棟」としてつながった木造平屋、広さ約200m2のエントランス棟だ。地元のヒノキ製材で建てている〔図1〕。

〔図1〕構造の仕組み 
5層に立ち上げた平面混構造

庁舎本体は木造と鉄筋コンクリート(RC)造の平面混構造。東西に水平力を負担するRC造のコアを配置し、内側の木造部分を挟む構成で5層まで立ち上がる。1階西側にある木造平屋のエントランス棟は、防耐火上の「別棟」として一般製材で建てた

RC造と同スパンで木造を構成
RC造と同スパンで木造を構成
架構アクソメ図 木造部分、RC部分ともに、従来のRC造の庁舎に多い6.4m×12mの基本スパンで構成。構造上の柱の断面は1階が660mm角、5階が380mm角。東西のRC造コア部分には、竪穴となる階段室やエレベーターなどを配置
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東西断面図
東西断面図
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奥行き12m、間口32mの事務室空間
奥行き12m、間口32mの事務室空間
庁舎本体の執務空間(写真:時空アート)
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広さ約200m2のエントランス棟。長さ4mのヒノキ製材を軸方向に2本継ぎ、さらに2段の重ね梁として8mのスパンを飛ばした。全面開放できる開口部には、120mm角のヒノキ製材4本による組み柱が並ぶ(写真:時空アート)
広さ約200m2のエントランス棟。長さ4mのヒノキ製材を軸方向に2本継ぎ、さらに2段の重ね梁として8mのスパンを飛ばした。全面開放できる開口部には、120mm角のヒノキ製材4本による組み柱が並ぶ(写真:時空アート)
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