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木造の大空間を設計するのに、にわか仕込みの知識では、イメージ通りに物事は進まない。大断面集成材やCLTの特性を学び、自分なりのルールを磨いていくのが近道だ。

 1 デザイン 
剛性の高い大断面材で木造を「軸」から解放

 「2mを超える梁せいの大断面集成材や、大判のCLTをつくれるようになったことで、建築は新しい空間に向かって動けるようになった」。マウントフジアーキテクツスタジオの原田真宏氏がそう意識したのは、RC造と大断面集成材の架構を上下2層に重ねた「立山の家」(日経アーキテクチュア2017年2月9日号参照)だった〔写真1〕。

〔写真1〕大断面集成材で「軸」から解放
〔写真1〕大断面集成材で「軸」から解放
富山県滑川市に2016年に完成した「立山の家」。高さ2.1mの大断面集成材で剛性の高い格子状の架構を構築。下層のRC造の軸にとらわれないスパンで木の架構を載せた(写真:浅田 美浩)
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 高さ2.1mの大断面集成材を組んだ格子状の梁が、平面的に高い剛性を持つことに着目。下層のRC造の壁と位置をずらして木の架構をかぶせた。「上下層の軸をそろえる」という木造の常識を覆した建築だ。

 大断面集成材をCLTに置き換え、はるかに大きな架構に挑んだ発展形が、「ROOFLAG賃貸住宅未来展示場」(「CLT格子架構で最大56mスパン」参照)だ〔写真2〕。この建物で格子状に組んだCLTの高さは2.3m。「これだけの高さがあると、重力方向に対して限りなく剛に近い架構を組める。剛性の高い木材は、接合部の工夫で十分な強度を確保してつなげていけるからだ。大スパンが可能になるだけでなく、木造のネックだった接合も苦ではなくなる」と原田真宏氏は言う。

〔写真2〕CLTの巨大な架構に発展
〔写真2〕CLTの巨大な架構に発展
立山の家の発展形とも言える「ROOFLAG賃貸住宅未来展示場」。高さ2.3mのCLTで剛性の高い格子を組み、アトリウムの大空間に架け渡した。最大スパンは56.5m(写真:安川 千秋)
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木造で“ニューモダニズム”へ

 「設計者が有り体の空間を求めていては新しい技術は生まれない」。そう指摘するのは同社共同主宰の原田麻魚氏。その言葉通り、両氏は事務所設立後にセルフビルドで建てた第1作「XXXX/焼津の陶芸小屋」(03年)を皮切りに、数多くの木造建築を手掛け、常に新しい空間を実現する手法を開拓してきた。近年の木造技術の発展は、その活動にさらに広がりを与えている。

 「コンクリートや鉄、ガラスが登場したのを機に、建築はモダニズムの時代に大きな変革を遂げた。その後、新しい建築を生むほど素材は進化してこなかった。ところが今、木造の分野で材料や関連技術が目覚ましい発展を遂げている。空間の捉え方や建築の在り方が大きく変わる可能性がある。“ニューモダニズム”とも言える時期を迎えているのかもしれない」と原田麻魚氏は話す。