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テレワークの浸透で、自宅もオフィスの一部とする考え方が広がってきた。仕事の内容によって、オフィスやコワーキングスペース、自宅を柔軟に使い分け、ワークスペースは徐々に街に溶けていく。オフィスに必要なのは多様性だ。

 働く場所が街全体に広がっていく──。オフィス家具大手オカムラ働き方コンサルティング事業部スペースデザイン3部の藤原篤部長は、新しい働き方の浸透を受けて、こう確信し始めている。

 藤原部長は長年、働く場所の設計やプロデュースに従事したプロフェッショナル。同社が安全なオフィスを構築するための具体策を示した提言「アフターコロナに向けたワークプレイス戦略」を取りまとめた張本人だ。

 提言では、働く場所を安全に保つための対策を5項目に分類して紹介した。(1)距離・位置を保つ、(2)仕切る、(3)接触を減らす、(4)清潔を保つ、(5)運用・ルールの対策──だ。その多くは「ニューノーマル事例 始まったオフィスリノベーション」で紹介した事例と重なっている。

 藤原部長が、専門家の視点でオフィス空間のデザインを考える過程で、「安全の次」の姿も見えてきた。

 近年のオフィスのトレンドは、オフィスの中で起こる活動=アクティビティーを数種類に分類し、そのアクティビティーごとに働く空間を使い分ける「アクティビティー・ベースド・ワーキング(ABW)」と呼ばれる手法だ。「case3 業務に応じて場所を使い分ける ソファや窓側席も執務席に」で紹介したJ-オイルミルズがオフィスリニューアルに採用している。

 藤原部長は、日本ではオフィス内部で完結しがちだったABWが、街に広がっていくとみる。「ビジネスパーソンは業務内容に応じて、オフィスの枠を越えて働く場所を選ぶようになるはずだ。これからは街全体で働くようになる」

 例えば、集中したいときは自宅や近所のコワーキングスペースで、チーム内の会議や会社だけに設置してある機材を使うような作業は、オフィス内のそれぞれの空間で、といった具合だ〔図1〕。オフィスが街に溶けていくと言ってもいいだろう。

〔図1〕働く場所を「街」から選ぶ時代へ
〔図1〕働く場所を「街」から選ぶ時代へ
テレワークと出社を併用する企業が増えれば、従業員は業務内容に応じて、オフィスの枠を越えて働く場所を選ぶようになる。そうした働き方に合わせて、オフィスは特定の機能を持つ場所へと変わる(資料:オカムラなどへの取材を基に日経アーキテクチュアが作成)
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