2019年10月、2万5000ヘクタールを超える浸水被害をもたらした東日本台風。多摩川流域の内水氾濫で電気設備が浸水したタワーマンションでは、復旧に長期間を要した。こうした被害を踏まえ、国土交通省は20年6月に浸水対策ガイドラインを公表した。
2019年10月12日、東日本台風(台風19号)の接近に伴い、多摩川流域では四六時中、氾濫の危険性や避難情報を伝える緊急速報メールの受信音が鳴り響いていた。
タワーマンションが立ち並ぶ川崎市中原区の武蔵小杉駅周辺では、増水した多摩川の水が、雨水を排水するための山王排水樋管を通じて逆流。広い範囲に内水氾濫を引き起こした。駅前に立つタワーマンション「パークシティ武蔵小杉ステーションフォレストタワー」の浸水被害はとりわけ深刻だった。
12日夜、周辺の浸水を知ったマンションの住人は、地下駐車場や建物の出入り口前に高さ60cmほど土のうを積み上げた。そのおかげで、外構は最大約30cmまで浸水したが、建物内に泥水が流れ込むのは防ぐことができた〔写真1~3〕。
しかし、水は想定外の場所から浸入した。地下3階の下に設けた貯水槽の蓋から、あふれ出したのだ。マンション内に流入した水は9000t。浸水によって地下の電気設備の多くが故障して停電し、住人は17日の復旧まで不自由な生活を強いられた。