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 2013年9月の台風18号がもたらした大雨で住宅が浸水した京都府福知山市。住民7人が市を相手取り、造成地が水害に遭う危険性の高さを認識していながら、土地の売り主としての説明を怠ったとして、総額約6200万円の損害賠償を求めた福知山造成地水害訴訟で衝撃の判決が下った〔写真1〕。

〔写真1〕行政の説明責任を問う全国初の水害訴訟
〔写真1〕行政の説明責任を問う全国初の水害訴訟
2013年9月の台風18号で浸水した京都府福知山市石原地区。原告の住民7人は、浸水リスクの高い土地であることを説明せずに販売したのは不当だとして、福知山市を訴えた(写真:福知山造成地水害被害訴訟弁護団)
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 京都地方裁判所は20年6月17日、宅地購入の意思決定に必要かつ十分な情報を市が提供していたとは言えないとして、市からじかに土地を購入した3人の原告に対して計約811万円を支払うよう市に命じたのだ。判決を不服とした市と住民は控訴した。

 この裁判は、自治体が開発した宅地の浸水リスクを巡って行政の説明責任を問う全国初の水害訴訟として、その判決に注目が集まっていた。

 問題となった地区は、市中心部から東に約6kmに位置する戸田地区と石原地区。両地区の北側にはそれぞれ1級河川の由良川と支流の大谷川が流れる。由良川流域は過去に何度も水害に見舞われてきた地域だが、市はかさ上げなどの対策を講じないまま宅地として販売していた〔図1〕。

〔図1〕由良川流域は水害常襲地
〔図1〕由良川流域は水害常襲地
福知山市は、由良川の氾濫によって何度も浸水被害に見舞われてきた。市は、戸田地区と石原地区の浸水リスクの高さを把握していたにもかかわらず、かさ上げなどの対策を講じないまま宅地化して販売していた(資料:福知山市の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
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