緊急事態宣言下で、神奈川県が全国初の新型コロナ患者向け仮設医療施設を建設した。5期に分けた工事で、先に完成した棟から患者が入院。建設作業は、使用開始した棟と距離を取りながら進めた。
(1)分棟配置で段階的に施工して作業員の安全を確保
(2)配管を屋外に設置し、病棟の使用開始後もメンテナンスしやすく
湘南鎌倉総合病院(神奈川県鎌倉市)の隣で、新型コロナウイルス感染症の中等症患者を受け入れるための臨時医療施設を神奈川県が全国で初めて仮設で建てた〔写真1〕。
運営者は、同病院を運営する沖縄徳洲会。病棟は2020年5月18日から稼働している。7月28日時点で24人の陽性患者が入院しており、5棟の入院病棟のうち、2棟を使用中だ。
敷地は武田薬品工業が所有するグラウンドで、同社が県に無償で貸し出した。病棟は平屋、管理棟は2階建てのプレハブでCT検査室などを備える。施設や医療機器の整備などの費用は約12億円だ。
設計・施工者は、熊谷組だ。同社はもともと現在進行中の湘南鎌倉総合病院の増築工事で施工を担当している。資材や重機の調達などを効率化する狙いもあり、臨時医療施設の設置事業でも設計・施工者に選ばれた。
県の要望は、6月末までに180床を確保することだった。また、県は精神疾患を持つ感染患者の受け入れ先として臨時医療施設の一部を、「精神科コロナ重点医療機関」に位置付けた。そのため、精神科病床は他の病床と異なる内装を検討しなければならなかった。
「通常の設計では、使用までに1年ほどかかる。今回は少しでも早く感染患者を受け入れるために、1期工事を急ぐ必要があった」と、熊谷組湘南鎌倉諸改修工事の高強作業所長は話す。
早期の患者受け入れと、作業動線の確保、作業員の感染予防を両立するため、施設は分棟とし、5期に分けて段階的に施工した〔図1〕。1日最大200人程度の作業員が現場に入り、4月22日の着工から約3週間で1棟目、約2.2カ月で全てを完成させた。
施工では、掘削をせず地面に直接コンクリートを打設して基礎工程を短縮。重機の通行用に敷いた鉄板を残して、そのまま歩道に使用できるようにした〔写真2〕。内装では、床工事や配管・配線工事を同時に進めた。
各棟は、リネンなどの運搬車や作業車が出入りできるように間隔を開けている。患者の受け入れが始まれば、医療スタッフ以外は建物内に入りにくくなるので、設備配管を屋外に出してメンテナンスしやすくした。