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「冬の備え」の最大の弱点は窓。その分、日射熱による「熱ボーナス」を取りこぼすことは許されない。前真之・東京大学准教授が、エコハウスの最終目標であるエネルギー自立を見据えた窓の設計手法について解説する。

(イラスト:ナカニシミエ)
(イラスト:ナカニシミエ)
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 通常の住宅で冬に急増する暖房負荷を限りなくゼロにできれば、太陽光発電を活用しながら1年中の生活を賄う「エネルギー自立」が実現する。肝心なのは冬の無暖房化なのだが、暖房なしで健康・快適な室内環境は実現できるのだろうか。

 暖房負荷を削減するには熱損失のダウンとともに、熱取得のアップが有効である。熱取得には家電などからの内部発熱や人体発熱があるが、これらを増やすのは現実的ではない。カギになるのは、開口部からの日射熱取得を増やすこと。そのためには、窓の断熱・日射取得のバランスを丁寧に把握する必要がある。

 連載第5回「ポツ窓住宅は省エネ?」(2020年12月24日号掲載)で、窓の熱貫流率Uw値は計算方法によって大きく異なることを示した。今回触れる「窓の平均日射熱取得率ηw値」も同様である〔図1〕。Uw値と同じく、実際の製品種別や開き方・サイズまで考慮した「詳細計算」が最も正確な値を得ることができるのだ。

〔図1〕窓の日射熱取得率ηw値も計算方法で異なる
〔図1〕窓の日射熱取得率ηw値も計算方法で異なる
窓の熱貫流率Uw値と同様、日射熱取得率ηw値も計算方法によって値が大きく異なる。簡易計算の①仕様表と②ガラス詳細計算は、いずれもガラス面積率が固定なので差は出ないが、WindEyeを用いた③個別詳細計算では実際の製品やサイズ、開き方によるフレームとガラスの面積率を用いるため、より正確なηw値を算出できる(算出に用いた窓は、2層複層Low-E/日射熱取得型ガラス・フレーム面積率11.8%・ガラス面積率88.2%)(資料:前 真之)
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 実際の設計においては、建築研究所が公表する技術情報の「仕様表」から性能値を拾う場合が多い。サッシとガラスの種別さえ選べばUw値・ηw値が出るが、あくまで概算。無暖房に向けた窓の最適設計には、力不足である。