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冬の寒さには「局所不快」が影響していると、前真之・東京大学准教授は言う。低断熱・低気密住宅でこれを解決しようと高温の空気を吹き出せば、乾燥感が気になってしまう。防ぎたい“不快のループ”について解説する。

(イラスト:ナカニシミエ)
(イラスト:ナカニシミエ)
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 前回の連載「空気温度さえ高ければ冬も快適?」(2020年10月22日号掲載)では、国際規格ISO7730について解説した。ここで触れたように、冬に暖かい家を実現するには「作用温度」の確保に努めることが重要だ。併せて、局所の不快を解決していくことも欠かせない。今回は、4つの局所不快とその解決策について探ってみたい。

 特に日本の家で問題になる局所不快は「上下温度差」である〔図1〕。

〔図1〕局所不快で1番深刻なのは「上下温度差」
〔図1〕局所不快で1番深刻なのは「上下温度差」
上下温度差をISO7730の許容範囲内に抑えるのはかなり難しい(不満者率はカテゴリーA・B・Cでそれぞれ、2%以下、5%以下、10%以下)(資料:前 真之)
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 気密性が劣っていると、床や壁との取り合いの隙間から、冷気が容赦なく侵入して足元を冷え込ませる。それを無理やり高温の空気暖房でごまかそうとすると、暖かい空気は膨張して軽いので、吹き上がって頭ばかりが暑くなる。

 ISO7730が推奨している上下温度差は2~4℃だが、低気密の住宅ではこれに到底おさまらない。気密の徹底、特に床周りの隙間を完全に塞ぐことが極めて重要となる〔図2〕。

〔図2〕気密が低いと断熱は効果なし
〔図2〕気密が低いと断熱は効果なし
両方とも、断熱等級4程度は確保されているが、左は気密性能が低く、右は丁寧な施工により気密性が確保されている。床下からの冷気の侵入は、上下温度差を極端に大きくし、深刻な不快の原因となる。気密性能の確保は、快適性の観点からも極めて重要である(写真:4点とも前 真之)
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