外皮平均熱貫流率UA値が小さいほど、住宅は高断熱とされる。前真之・東京大学准教授は、その生命線が窓だと言い切る。開口面積を犠牲にすることなく断熱性能を確保する、設計時のポイントを解説する。
冬を健康・快適に過ごすためには、家中を常時適温に保つことが必要になっている。暖めた室内空気が屋外に漏れてしまう「熱損失」を抑えるために必要なのが建物外皮の「断熱」だが、最近では小さな窓を複数連続させた“ポツ窓住宅”もよく見かける。窓を小割りにすれば、断熱性能は高められるのだろうか。また、暖房費も少なくできるのだろうか。
最優先は窓、続いて床
各部位の熱の伝わりやすさについては、「熱貫流率U値」で表される。断熱材を厚く入れられる天井、床、壁は小さい値に抑えることは容易。一方で、窓(Window)のU値「Uw値」は極めて大きくなる傾向があるので注意が必要だ。
窓からの熱損失は、ガラス部分では「放射」と「対流」、フレーム部分では「伝導」。主にこの3要素によって熱が逃げていく〔図1〕。
高断熱化するにはガラスの複層化は当然として、放射低減のためにはガラス表面にLow-Eコーティングを施すことが有効だ。遠赤外線の放出を防ぎ、放射による熱損失を大きく減少させる〔図2〕。加えて、対流低減のためにはガス封入、伝導低減のためにはフレームの材質を樹脂や木材に変更することなどが必要だ。
フレームに広く用いられてきたアルミニウムは、加工性や耐候性に優れた素材だが、熱伝導率が極端に高く熱が伝わりやすい。エコハウスに純アルミサッシは厳禁だ。
ガラスとフレームを強化することで、開口部の熱貫流率Uw値は劇的に小さくなり、室内側の表面温度も大きく上昇する〔図3〕。低断熱の開口部は、熱が逃げやすいだけでなく、室内側が低温となり結露の原因になる。特に冷熱が伝わりやすいフレームは高断熱のものを選びたい。