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この数年、毎年のように好業績をたたき出してきた建築設計事務所。コロナ・ショックが2020年度以降の業績にもたらすインパクトに、戦々恐々としている。日経アーキテクチュア調査では回答企業の45%がリーマン・ショックと同等以上の影響があるとした。

 2011年以降、建築需要の高まりとともに、建築設計事務所は大手を中心として緩やかに売上高を伸ばしてきた。19年度決算も、日経アーキテクチュア調査に回答した企業の6割が設計・監理業務売上高を伸ばすなど、おおむね好調だった(19年度決算の詳細は「半数以上が営業利益を伸ばす」以降を参照)。

 しかし、20年度以降の業績には暗雲が垂れ込め始めている。新型コロナウイルスの感染拡大による景気悪化で、経営環境が激変しつつあるからだ。コロナ禍が20年度の業績に与える影響について、日経アーキテクチュア調査に回答した設計事務所107社の28%が「悪い影響がある」、48.5%が「どちらかと言えば悪い影響がある」としており、業績悪化への不安を色濃く反映する結果となった(円グラフ「Q.新型コロナウイルス感染拡大の2020年度業績への影響は?」参照)。

「少し遅れて影響が出てくる」

 コロナ禍の収束時期はいまだ読めず、20年4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は前期比7.8%減、年率換算で27.8%減と、戦後最大の落ち込みを記録。コロナ・ショックのインパクトは、08年9月のリーマン・ショックと同等以上になる恐れもある。日経アーキテクチュア調査に回答した92社のうち27%が「リーマン・ショックよりも悪影響がある」と回答。「同程度の悪影響がある」も18%に上った〔図1〕。

〔図1〕リーマン・ショックと比べた業績への影響は?
〔図1〕リーマン・ショックと比べた業績への影響は?
日経アーキテクチュア調査に回答した企業に、新型コロナウイルスの感染拡大が20年度の業績に与える影響を聞いた。調査概要は下記(資料:日経アーキテクチュア)
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調査概要
  • 各社の2019年度単体決算(2019年4月~20年3月の間に迎えた決算期の単体実績)をアンケート形式で調査した。調査票は20年6月初旬に郵送し、7月初旬までに回収した
  • 調査主体:日経アーキテクチュア
  • 調査協力:日経BPコンサルティング
  • 調査対象は、(1)公共建築設計者情報システム「PUBDIS」から抽出した20人以上の建築設計事務所、(2)前回調査(2018年度決算ランキング)における回答企業で、合計368社。回答社数は116社(回答率31.5%)

 日建設計経営企画グループ副代表の堀井一孝経営企画部長は「リーマン・ショック後は受注が激減した。翌09年度から影響が出始め、10年度決算あたりで減少のピークを迎えた。コロナ・ショックも同様に、少し遅れて影響が出てくるだろう」とみる。

 リーマン・ショックの翌年、建築物着工床面積は激減。需要の回復に貢献したのは13年の東京五輪開催決定だった〔図2〕。「五輪開催決定後、売り上げはV字回復した。このように経済が反転するきっかけがないと、売り上げが落ち込んだまま停滞する恐れもある」(堀井経営企画部長)

〔図2〕大手設計事務所の売上高は2011年以降、順調に伸びてきた
〔図2〕大手設計事務所の売上高は2011年以降、順調に伸びてきた
日経アーキテクチュアが毎年実施している決算調査で上位10社に入った企業の建築設計・監理業務売上高の合計値(左軸)と、建築物着工床面積(右軸)の推移。設計事務所の売上高は、リーマン・ショックの2~3年後に落ち込みのピークを迎え、東京五輪開催決定を契機に大きく伸びた(資料:国土交通省の資料などを基に日経アーキテクチュアが作成)
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 三菱地所設計の経営企画部長と広報室長、内部監査室長を兼務する清水明執行役員は、リーマン・ショックとの違いについて次のように分析する。「リーマン・ショック後は発注者が資金難に陥り、『やりたくてもできない』と中止になる案件が多かった」とし、「今回は資金面での問題は今のところ顕著でないが、発注者が需要の変化を読み解く時間が必要になる。このため、短期的には設計業務の受注が停滞するだろう」とみる。

コロナ禍の長期化を警戒

 日本設計取締役常務執行役員で、10月1日付で同社代表取締役社長に昇格する篠崎淳氏は、「今は動向を判断できる状況ではない。先読みしすぎないようにしている」と話す。

 先行きが読めないことへの不安感は日経アーキテクチュアの調査結果にも表れている。20年度の売上高については、減少を見込む企業が3割に上り、前年度調査(日経アーキテクチュア19年9月12日号「2018年度決算調査 今が新事業展開のチャンス」参照)の14.8%から大幅に増加した〔図3〕。回答率自体も下がった。長期化の様相を呈するコロナ禍に、多くの企業が不安を募らせているようだ。

〔図3〕2020年度の設計・監理業務売上高の見通しは?
〔図3〕2020年度の設計・監理業務売上高の見通しは?
2020年度決算の見通しについては、回答が大きく分かれた(資料:日経アーキテクチュア)
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