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コロナ禍で建築設計事務所の業務や経営に変化が表れ始めた。多くの設計事務所が在宅勤務を実施し、そのメリットとデメリットを認識したからだ。テレワーク拡充に積極的な企業は多いが、コミュニケーション不足など課題も多い。
新型コロナウイルスの感染拡大で、建築設計事務所の経営や業務にどのような影響が出たか──。日経アーキテクチュアの調査で最も多かった回答が、「対面での営業活動の中止」だ。回答した設計事務所106社の49%が挙げた〔図1〕。

静岡市は5月、コロナ対策に注力するため、庁舎移転(上図)など3つの建設事業を停止した(資料:静岡市)
調査概要
- 各社の2019年度単体決算(2019年4月~20年3月の間に迎えた決算期の単体実績)をアンケート形式で調査した。調査票は20年6月初旬に郵送し、7月初旬までに回収した
- 調査主体:日経アーキテクチュア
- 調査協力:日経BPコンサルティング
- 調査対象は、(1)公共建築設計者情報システム「PUBDIS」から抽出した20人以上の建築設計事務所、(2)前回調査(2018年度決算ランキング)における回答企業で、合計368社。回答社数は116社(回答率31.5%)
プランテック総合計画事務所の小山直行社長は、「4~5月は営業活動ができず、新規の案件情報が入ってくる数が減った。ただ、6月以降は対面での打ち合わせがある程度できるようになっただけでなく、オンラインでの打ち合わせも増えた」と言う。
発注者がオンラインでの会議に応じてくれることが増えて、移動時間などが節約でき、設計業務などに割く時間が増えるという意外な効用を歓迎する声は多い。
このように、5月25日の緊急事態宣言解除後に解消が進む問題がある一方、今後の設計事務所の経営に与える影響が大きい課題は残っている。受注した設計案件の中止や先送りだ。調査に回答した設計事務所の41%が6~7月時点で設計案件が中止や先送りになったと回答した。「現時点では発注者が判断を迷っている案件もあるとみられ、今後、中止や先送りが増える恐れがある」と山下設計ソリューション本部長の岸川聡史取締役執行役員は警戒する。