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外出自粛やテレワークの普及によって、多くの人は家で過ごす時間が長くなった。だが突如、「仕事」が持ち込まれた生活空間には無理が生じ、住宅に対する様々な不満が噴出した。新たなニーズに対応するには、そうした声を拾い、住生活を再考することから始めなければならない。

住宅の開発担当者や研究者は今、自粛期間中に人々が感じた住宅への不満や不安をこぞって研究している。耐震性能や環境性能など、質が向上したはずの現代住宅で、職住を両立しづらい実情と課題が浮かび上がった。

 これまで働き方改革や女性の社会進出などで、必要性が叫ばれながらも一向に進まなかったテレワーク。コロナ禍は図らずもその普及を推し進める結果となった──。

 パーソル総合研究所(東京都千代田区)が2020年5月29日から6月2日にかけて実施した、企業の正社員を対象としたアンケート調査によると、全国のテレワーク実施率は25.7%だった(「職住融合時代のニュープラン」)。その数字は、緊急事態宣言の解除前とあまり変わらず、解除後もテレワークが継続されていることが分かった。

 日本テレワーク学会で会長を務める市川宏雄・明治大学名誉教授は、「これまでテレワークを経験してこなかった人も、コロナ禍による外出自粛を受けて、ある程度の仕事は自宅でこなせると実感したはずだ」と語る。

 一方で、もっと自宅で効率的に作業がしたい、という新たな欲求も生まれた。大和ハウス工業は6月、配偶者がいる20~40代の男女1200人を対象に、「コロナの前と後、生活に関する実態調査」を実施した。調査の結果、時間を有効活用できる点をテレワークのメリットに挙げる回答が多かった。一部には、「周りの音が気になって集中できない」「1人の時間をつくれない」など、住空間に対する不満やストレスを感じているといった意見もみられた〔図1〕。

〔図1〕長期間のテレワーク実施で見えてきたメリット・デメリット
〔図1〕長期間のテレワーク実施で見えてきたメリット・デメリット
大和ハウス工業は2020年6月5日から10日にかけて「コロナの前と後、生活に関する実態調査」をインターネット上で実施した。対象者は全国の20~40代の配偶者がいる男女1200人(資料:大和ハウス工業)
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