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家の機能を近所に求める人が増えている。郊外や地方都市の再生事業を多く手掛ける大島芳彦氏に、ウィズコロナ時代の家や地域の在り方を聞いた。

おおしま よしひこ:1970年生まれ。93年武蔵野美術大学建築学科卒業。2000年よりブルースタジオ専務取締役。団地再生プロジェクト「ホシノタニ団地」で16年グッドデザイン金賞(経済産業大臣賞)を受賞(写真:日経アーキテクチュア)
おおしま よしひこ:1970年生まれ。93年武蔵野美術大学建築学科卒業。2000年よりブルースタジオ専務取締役。団地再生プロジェクト「ホシノタニ団地」で16年グッドデザイン金賞(経済産業大臣賞)を受賞(写真:日経アーキテクチュア)

コロナ禍で、住宅の在り方や市場はどう変わっていくと考えるか。

大島 家や暮らしの場の概念が一気に拡張するだろう。これまでの住宅は、敷地や専有部分といった“境界線”の内側で捉えられてきた。しかし、コロナ禍でのリモートワークや休校などで家にいる時間が長くなったとき、多くの人たちが家という境界線を越えて、近所に色々な暮らしの機能を求めて動いた。

 今後は、家という概念を地域に広げ、街の在り方を考えていくべきだろう。特に、人口減少や空き家増加の問題を抱える郊外住宅地の場合、わざわざ車で出かけるショッピングモールではなく、歩いて行けるような近所に、暮らしの様々な要素がちりばめられていることが重要になる。

郊外駅前の働く場が活況

郊外の場合、家の概念を広げると、どのような街の姿があり得るか。

大島 私たちが企画・設計を手掛けた、シェアオフィスが核の複合施設「ネスティングパーク黒川」(川崎市)が一例だ〔写真1〕。新宿から40分前後の小田急多摩線黒川駅前に2019年5月にオープンした。

〔写真1〕郊外の自宅近くに働く場を提供
〔写真1〕郊外の自宅近くに働く場を提供
シェアオフィスを擁する木造平屋の「ネスティングパーク黒川」。店舗にも使える「ルーム」(15室、広さ4~8m2)のほか、写真にある「ブース」(9室)と大テーブルを共有する「デスク」(8席)の3タイプがある(写真:koichi.ogasahara)
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 黒川駅は各駅停車しか止まらず、駅前に商業地はない。駅を出ると住宅地や農地や谷戸の自然環境が混在する風景が広がる。シェアオフィスのニーズは未知数だったが、商業地域を挟まずに住宅地が始まる駅の前に仕事場があったら便利だろうと思った。周知に少し時間はかかったが、その後、ほぼ想定した通り、近隣住民が利用してくれるようになった。

コロナ禍で利用者の動向に変化はあったか。

大島 20年4月以降、空室が増えたが、6月ごろから盛り返し、8月末時点でほぼ満室になっている。利用者は、隣駅くらいまでのエリアに住む独立系クリエーターや子育て中の女性、高齢者などが目立つ。自宅に近い仕事場や趣味の空間として利用しており、まさに家の概念を拡張した場所になっているのだと思う。

昨年オープンした施設が、図らずしてコロナ禍でニーズとマッチしたところもあるか。

大島 東日本大震災の頃から、皆が気付き始めた都心集中のリスクや、郊外が抱える問題に対する潜在的ニーズが、コロナ禍を機に顕在化したとも考えられる。

ネスティングパーク黒川

配置図
配置図
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  • 所在地:川崎市麻生区南黒川4-2
  • 敷地面積:2517.49m2
  • 延べ面積:447.49m2
  • 構造:木造
  • 階数:地上1階
  • 事業者:小田急電鉄
  • 企画・設計・監理者:ブルースタジオ
  • 施工者:marukan
  • 開業時期:2019年5月