「空の産業革命」と呼ばれるドローンの活用が、いよいよ建築分野でも始まった。自由に飛べる“鳥の目”で、これまで見えなかった建築の姿を届けてくれる。2020年7月に政府が閣議決定した「成長戦略実行計画」に、建築分野へのドローン活用が盛り込まれたことも追い風だ。外壁調査や施工検査、設計など、先駆的な取り組みをリポートする。

飛び立て! 建築ドローン
“鳥の目”が設計・施工・維持管理を革新
目次
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“命綱”付きドローンを超高層で一本釣り
都市部でのドローン飛行には危険が伴う。だが、ドローンによる外壁調査の手法が確立すれば、仮設足場が不要になるなど、大幅なコストダウンが見込める。政府は建築基準法の見直しを掲げており、ドローン活用の動きが活発化している。
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ドローンの赤外線画像から“浮き”を自動判定
ドローンを用いた外壁調査の先駆者とIT企業が手を組み、ドローンやAI(人工知能)を用いた建物調査の方法を開発して会員企業に提供していく。参加するのは、建築検査学研究所(神奈川県大和市)と日本システムウエア(東京都渋谷区)、do(東京都千代田区)の3社。2020年3月に「建築検査学コンソーシアム」を…
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「スマートタイルセーバー」20年7月から“試験飛行”開始
大手建設会社の竹中工務店は、ドローンで撮影した赤外線画像を用い、AI(人工知能)を用いた画像解析でタイルの浮きを自動検出する「スマートタイルセーバー」を開発した。2020年7月から既存建物を対象とした試行を開始、9月までに2棟で適用した。
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建築基準法の見直しを視野に政府が規制緩和の方針示す
政府は2020年7月、「赤外線装置を搭載したドローンによる外壁調査」を盛り込んだ成長戦略実行計画を閣議決定した。改めて建築分野でのドローン活用に対する期待感が高まっている。
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自動操縦アプリで屋根点検
ドローンパイロットとのマッチングサイトも登場
ドローンによる空撮が身近な存在になってきた。小規模事業者向けの屋根点検サービス、建築現場の定点撮影など向けの自動操縦アプリ、空撮を手掛ける事業者とのマッチングサイトも登場している。
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ドローンで検査工程を大幅短縮
建築現場の上空でもドローンのローター音が響き始めている。複雑な工程も空から見れば一目瞭然。先行する大手建設会社の活用事例を見ていこう。
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「マイクロドローン」の試行続く
屋内飛行のニーズは高いが制御技術の開発が課題
東京都大田区に4棟の物流ビルを所有する三菱地所グループの東京流通センター(TRC)は2020年から、ドローンによる施設管理サービスの開発に着手した。ドローン関連のサービス開発を手掛けるベンチャー企業、アイ・ロボティクス(東京都新宿区)とタッグを組み、倉庫空間で実証実験を進めている。
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眺望もドローンで事前計画
設計意図を伝えるため、設計者もドローンを使い始めた。超高層のプロジェクトでは、ドローンで眺望を撮影して発注者にその魅力を訴求する。建物が完成してからは、空間の魅力を伝えるためドローン撮影を試みている。
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ドローン空撮の依頼が増加中
撮影に密着、都市部上空撮影のコツとは
竣工写真などを専門とする建築写真事務所でも、若手カメラマンを中心にドローン導入が進んでいる。2018年に新規独立した写真事務所、ITイメージング(東京都豊島区)では、「20年に入って、特に空撮の引き合いが増えてきた」と好感触をつかんでいる。
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都市部での飛行には法的課題も
先行する土木分野とは異なり、建築分野では都市部での使用が前提となる。他人の家の上空を飛ぶ際など、他者の権利侵害にならないかが気になるところ。ドローンの法的問題に詳しい林浩美弁護士に、都市部特有の問題について聞いた。