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 政府は2020年7月、「赤外線装置を搭載したドローンによる外壁調査」を盛り込んだ成長戦略実行計画を閣議決定した。改めて建築分野でのドローン活用に対する期待感が高まっている。

 政府は15年ごろからドローンに関するルール整備と市場育成に取り組んできた。主な出来事をまとめたのが図1だ。事件をきっかけにルール整備が進んでいることがわかる。

〔図1〕ドローン活用のルール整備と市場育成
〔図1〕ドローン活用のルール整備と市場育成
政府によるドローン活用の主な取り組みを年表にまとめた。グラフは、ドローンを活用したサービス市場の分野別市場規模を示している。「土木・建築」と「点検」に注目した。「その他」には「農業」「物流」「防犯」などが含まれる。市場規模は年度ごとの数字で、2019年度までは推計、20年度以降は予測である(資料:インプレス総合研究所発行の「ドローンビジネス調査報告書2020」を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 特に印象深いのは、2015年4月に発生した首相官邸にドローンが侵入した事件だ。これを受けて航空法が改正され、基本的なドローン運用のルールが示された。人口集中地区の上空での飛行禁止や目視外飛行の禁止などだ。

 国はルールを整備する一方で、ドローンを産業に活用するため官民協議会を15年12月に設置。ドローンの利活用と技術開発のロードマップを16年4月に策定した。以降毎年アップデートしている。最新の20年版によると、22年度ごろに「有人地帯での目視外飛行の実現」を目標に掲げている。

 インプレス総合研究所(東京都千代田区)によると、ドローンを活用したサービス市場の規模は20年度が約1000億円、23年度が約2500億円、25年度が4500億円と急速に拡大すると予測する。

NEDOが技術開発を進める

 20年7月の成長戦略実行計画に盛り込まれた建築分野のドローン活用の内容は、次のようなものだ。

 建築基準法に基づく建築物の外壁調査について、「一級建築士などによるテストハンマーを使って打診する方法と比較して、赤外線装置を搭載したドローンを用いて、同等ないしそれ以上の精度で問題箇所を検出する性能を確認できれば、規制をドローン活用でも代替可能とするよう見直す」。

 ドローン調査は、テストハンマーによる打診を代替できるのか。

 国土交通省は17年度と18年度の2カ年で、その可能性を検討している。建築基準整備促進事業の「非接触方式による外壁調査の診断手法及び調査基準に関する検討」(調査番号T3、以下T3事業)だ。

 T3事業では、赤外線装置による外壁調査が全面打診と同程度の診断精度を確保できるかを検討している。高所については、ドローンを用いた調査を想定した。また、報告書では「ドローンを活用した建築物調査実施要領(案)」を示し、適用限界の把握や、調査精度と適用範囲の確認が必要とした。

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 一方、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は20年1月、「ドローン等を活用した建築物の外壁の定期調査に係る技術開発」に取り組む事業者を公募。日本建築防災協会と神戸大学、日本建築ドローン協会を選定した。この事業でドローンを用いた新たな技術が開発され、外壁調査の効率化が進むことが期待される。