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 東京都大田区に4棟の物流ビルを所有する三菱地所グループの東京流通センター(TRC)は2020年から、ドローンによる施設管理サービスの開発に着手した。ドローン関連のサービス開発を手掛けるベンチャー企業、アイ・ロボティクス(東京都新宿区)とタッグを組み、倉庫空間で実証実験を進めている〔写真1〕。

〔写真1〕施設管理者もドローン活用
〔写真1〕施設管理者もドローン活用
TRCが保有する物流倉庫(右上)で実証実験が始まった。天井付近を飛行中のドローンから撮影した映像。照度が低く、吊り材やダクトが障害物となっている(写真:アイ・ロボティクス、右上は池谷 和浩)
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左は操作の模様。ヘッドマウントディスプレイを使う。右がマイクロドローン(写真:左は家入 龍太、右はアイ・ロボティクス)
左は操作の模様。ヘッドマウントディスプレイを使う。右がマイクロドローン(写真:左は家入 龍太、右はアイ・ロボティクス)
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 近年、物流倉庫は大型化が進んでおり、TRCが17年に建て替えたTRC物流ビルB棟(地上6階建て、延べ面積17万1300m2)は、梁下が5.5mに達する。「とても脚立だけで点検できない」と、同社営業部の中野亮平営業企画課長は語る。

 天井付近の点検は高所作業車をレンタルして行う想定だが、漏水や照明設備の故障などの緊急時の対応が懸念材料となっている。そこで浮上したのがドローンだ。

現時点では自動化は困難

 新型コロナの影響により、TRC物流ビルA棟の1区画(約1200m2)を使った実証実験が始まったのは、20年夏ごろ。まず実施したのは、重さ170g以下のマイクロドローンによる天井付近の試験飛行だ。

 ドローンの映像を見ながらの、障害物センサーがないドローンの遠隔操作だ。閉鎖コースでの飛行タイムを競う「ドローンレース」にも出場しているパイロットが挑んだ。

 課題として浮かび上がったのは照明の暗さだ。点検では照明器具の上を飛ぶ必要があり、その位置では照度が低い。「ドローン自体に照明を備えたり、照明を補助する別のドローンを同時に飛ばしたりする必要がある」と、同社最高技術責任者の梶谷健一氏は語る。

 現時点では屋内での自動飛行は難しく、小型軽量のマイクロドローンを人間が操作する手法が現実解だという。マイクロドローンなら、落ちたりぶつかったりしても人や施設、保管物に与える影響が少ないためだ。360度全天球カメラを搭載し、不具合箇所付近を映像検査する手法が検討されている。今後、操作をどこまでシステムで支援するかが鍵になる。