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10年以上かけて、安藤忠雄氏の設計による施設を順次、建て増してキャンパスを拡張。統一感のあるキャンパス整備を進めてきたその間に、学生数は10倍に増加した。

 ガラスのファサードを映す水盤の通路を行く学生たちは、その先の大屋根に開いた三角形のトップライトに導かれるように校舎に入っていく〔写真1〕。2019年3月、岡山市にあるIPU・環太平洋大学(以下、IPU)が、「DISCOVERY(ディスカバリー)」と名付けられた校舎をお披露目した。

〔写真1〕水盤を抜けてアプローチ
〔写真1〕水盤を抜けてアプローチ
2019年に竣工した最新の校舎である「DISCOVERY」。ガラスのファサードが映り込む水盤を抜けてアプローチする。建物は鉄骨造の2階建て(写真:生田 将人)
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 設計を手掛けたのは安藤忠雄建築研究所(大阪市)。09年完成の「TOPGUN(トップガン)」以降、このキャンパスで安藤忠雄氏が設計した5棟目の施設となる〔写真23〕。大学の成長とともに、安藤氏の建築を1棟ずつ建て増してきた格好だ。

〔写真2〕田園風景に囲まれたキャンパス
〔写真2〕田園風景に囲まれたキャンパス
2009年に完成した施設「TOPGUN」の屋上から見るDISCOVERYの遠景。キャンパス周辺には水田の続く田園風景が広がる(写真:生田 将人)
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〔写真3〕軒裏に揺らめく反射光
〔写真3〕軒裏に揺らめく反射光
建物のエントランスからの見返し。屋根に開けたトップライトの光が床に映る一方、軒裏には水盤の反射光が揺らめく。通りの向こうに見える水平屋根の建物は2013年完成の講義棟「PHILOSOPHIA」(写真:生田 将人)
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 安藤氏は、キャンパス設計の依頼を受けてからの10数年を振り返ってこう話す。「大学には、最初から大きなキャンパスを一気につくらないほうがよいという話をした。全体として学生を育てるべき環境となるように、将来を見定めて1棟ずつ建てていくのがいいと思った」