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入居開始直後から瑕疵(かし)を訴え続けていた福岡市内のマンション「ベルヴィ香椎六番館」の管理組合。竣工から約25年がたった2020年7月、販売会社3社の社長が杭の未到達を認めて住人に謝罪した。

 7月21日夕、マンションの管理組合と報道関係者の前に、JR九州の青柳俊彦社長と福岡商事の久保山英樹社長、若築建設の五百蔵良平社長らが姿を現し、謝罪会見を開いた〔図1〕。3社が販売したマンション「ベルヴィ香椎六番館」(福岡市)で、29本のうち8本の基礎杭が支持地盤に未到達だったことが明らかになったからだ。

〔図1〕販売会社3社の社長がそろって謝罪
〔図1〕販売会社3社の社長がそろって謝罪
7月21日、基礎杭が支持地盤に未到達だったことを認めたJR九州と福岡商事、若築建設の社長がマンションの管理組合に謝罪。5日後に3つの補償案を提示した(写真:佐々木 太)
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佐々木太(ささき ふとし)
佐々木太(ささき ふとし)
特別理事(写真:日経アーキテクチュア)

 同マンションでは1995年の入居開始からわずか2年後に外壁のひび割れや玄関扉の枠のゆがみなどが発生。管理組合は販売3社に不具合を訴え続けてきた経緯がある。長年、この問題を担当してきた佐々木太特別理事は販売会社の謝罪を受けて、「20年以上かかったが、ようやく販売会社が施工不備を認めた。しかし、まだスタートラインに立ったにすぎない」と気を引き締める〔写真1〕。

〔写真1〕竣工から25年後に杭の未到達が判明した「ベルヴィ香椎六番館」
〔写真1〕竣工から25年後に杭の未到達が判明した「ベルヴィ香椎六番館」
JR九州と福岡商事(当時、福岡綜合開発)、若築建設が販売した。鉄筋コンクリート(RC)造・地上7階建て。総住戸数は60戸。住戸の販売価格は約2200万~3500万円だった(写真:日経アーキテクチュア)
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JR九州などが3つの補償案

 瑕疵担保期間は過ぎているが、時効だからといって代償を支払わなくてもいいとはならない。

 謝罪会見から5日後の7月26日、3社は改めて住民説明会を開催。各住戸の被害状況などを調査したうえで迷惑料を支払うと説明した。そして、長さが不足している杭を補強する地盤改良により補修案、総会での決議を踏まえたうえでの建て替え案、住戸の買い取り案──の3つを提示した。費用はいずれも販売3社が負担するとしている。

 補修と建て替えにかかる費用は公表していない。買い取りの場合、被害の大きさに関係なく全60戸を販売価格で買い取る。佐々木特別理事によると、住戸の販売価格は約2200万~3500万円。合計で約16億円に上る計算だ。

 ベルヴィ香椎六番館の施工は、若築建設・九鉄工業・中和建設JV(共同企業体)が担当。杭工事は大洋基礎(東京都目黒区)が請け負った。過去の同様のトラブル事例に照らせば、今後、販売会社が施工者に損害賠償を請求する展開も考えられる。