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相次いで発覚する法令違反が、建築界への信頼を揺るがし続けている。コロナ禍による景気悪化に伴い、法令違反が増える懸念もある。信頼回復や不正の防止に向けて、抜本的な対策が必要だ。

 建設業界の不祥事と聞いて真っ先に思い浮かぶのが、2005年に発覚した構造計算書偽造事件だろう〔図1〕。1人の一級建築士がホテルやマンションなど99件もの偽造に関与し、建築基準法令が規定する耐震性能を満たさない建物を社会に現出させた。

〔図1〕相次ぐ建設業界の不祥事で消費者サイドの意識が高まる
〔図1〕相次ぐ建設業界の不祥事で消費者サイドの意識が高まる
2005年の構造計算書偽造事件以降に発覚した主な事件をまとめた(資料:取材を基に日経アーキテクチュアが作成、写真:日経アーキテクチュア、匠総合法律事務所)
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秋野 卓生(あきの たくお)
秋野 卓生(あきの たくお)
匠総合法律事務所 代表社員弁護士(写真:日経アーキテクチュア、匠総合法律事務所)

 世間をにぎわせたこの事件は、構造計算適合性判定の導入を柱とする06年の建築基準法改正などにつながり、建築界は建築確認・検査の厳格化によって自らを縛る形で、不祥事の「落とし前」をつけた。

 住宅・建築分野の紛争に詳しい匠総合法律事務所の秋野卓生弁護士は「構造計算書偽造事件や、この事件に続いて木造戸建て住宅の壁量不足が発覚した頃は、建設業界のコンプライアンスに対する意識は今よりもずっと低かった」と指摘する。

 秋野弁護士は、社会の安全を根底から揺るがすような不祥事の続発を受けて、消費者側の安全・安心への要求が強くなり、それに対応する形で建設業界のコンプライアンス意識が高まったとみる。「消費者が泣き寝入りせずに建物の不具合を訴えるようになったり、消費者保護の観点から住宅瑕疵担保履行法が制定されたりしたことで、業界に緊張感が芽生えた」(秋野弁護士)

 社会が建設業界に注ぐ厳しい視線と、それに伴う業界の意識の変化が作用したのか、10年代前半にかけて、大きな不祥事は一時、鳴りを潜めた。しかし、15年の東洋ゴム工業による免震偽装事件の発覚を皮切りに、再び大型のコンプライアンス違反が露見するようになった。KYBによる免震偽装やレオパレス21による界壁施工不備などが代表的な事例だ。