外出自粛やテレワークを経験し、家庭での感染予防の意識が高まっている。自宅に感染防止策を施した消費者も出てきており、市場は動き出している。新たなニーズに応え、売り上げを伸ばす製品を紹介する。
コロナ禍にあって、売り上げを伸ばしている住宅設備がある。住まい手を引き付けるのは「換気」「非接触」「非対面」の3つのキーワード。感染リスクを避けたい消費者のニーズが、関連製品の需要に火を付けた。
換気
ダイキンが新製品を積極投入
「当社の調べでは、2020年5月の緊急事態宣言解除後も、自宅で換気をしている人は全体の約9割を占めている。換気が生活行動の1つとして消費者に定着した感がある」
ダイキン工業の舩田聡常務執行役員は、10月14日に開いた同社の新製品発表会の席上、コロナ禍で消費者の換気に対する関心がかつてないほど高まっている実態を強調した。
今回、同社は住宅向けに換気機能付きのエアコン5製品を発表した。いずれも、換気しながら冷暖房できるのが特徴で、屋外から取り込んだ空気をエアコンの熱交換器で適温に整えて室内に送り込む。
5製品の中核を担うのが、フラッグシップ機の「うるさらX」だ。19年に発売した後、20年夏にテレビCMなどで「換気できるエアコン」として消費者に訴求。その効果もあって20年6月のうるさらXの販売台数は、前年同月比で約5割増しとなった。
冬季の加湿を目的に開発
一般のエアコンは、室内機と室外機をつなぐ2本の配管を使って冷媒を循環させている。冷媒を介して熱をやり取りしているだけで、外気を取り入れているわけではない。一方、うるさらXには冷媒をやり取りする2本の配管のほかに、外気取り込み用のホースがもう1本付いている〔図1〕。
もともとこのホースは冬季の加湿を目的として取り付けたもの。まず、外気を室外機に取り込み、内蔵している加湿ローター(円形の装置)に水分子を吸着させる。加湿ローターの右半分の上部にはヒーターがあり、ここで水分子を温めて空気と一緒に室内に送り出す。
この仕組みにより、冬季は室外機で外気を取り込みながら暖房・加湿をする。夏季には、室内の水分を室外機の加湿ローターに吸着させて除湿。外気を取り込みながら、冷房・除湿の運転ができる。
この仕組みはうるさらXの前身の「うるるとさらら」の時代から搭載されてきた機能で、20年以上にわたって同社が培ってきた技術だ。加湿プロセスの一環として外気を取り入れていた点が、コロナ禍のさなかに思わぬ形で脚光を浴びた。