競技の白熱や観戦の熱狂をリアルな場で共有する体験に急ブレーキがかかった。東京五輪やプロスポーツ、地域イベントまで開催や集客を見合わせる時期が生じた。一方、多様な利用者を受け入れ、多様な稼ぎ方に対応するために、スポーツ建築は変革を遂げねばならない岐路に差し掛かっていた。「みる」「する」スポーツの在り方を熟慮すれば、新たな未来像が見えてくる。

コロナで急転!「スポーツ建築」の針路
観戦・運動体験から計画再考を
目次
-
集客回復に向けて「技術実証」
映像解析などで3万人規模の「行動」を把握
スポーツ興行をリードするプロ野球界で、2球団が客数の規制を一時解除した。政府承認の下、感染予防のための技術を制限のない状態で使ってみるのが目的だ。3万人規模の観衆からデータを取得。今後に生かす。
-
先駆的計画はこう生まれる
コロナ禍に見舞われる以前から、スポーツ建築には変革が起こりつつあった。日本政策投資銀行が多機能複合型の「スマート・ベニュー」を提唱した2013年には既に、問題意識の上での転換期は来ていた。
-
日常に溶け込む「開放型」施設
秋田ノーザンゲートスクエア(秋田市)
単独で完結した閉じた空間になってしまいがちな体育館。スポーツ施設の在り方が再考されるなか、「地域に開く」をコンセプトに掲げ、街の日常に溶け込もうとする施設が2020年1月、JR秋田駅前に開業した。
-
標準形脱して「公園一体」追求
“使い倒し”図る松本平広域公園陸上競技場
陸上競技場を公園と一体化させる。前例のない提案でプロポーザルの最適候補者となったAS(JVの1社)の2人と、スポーツ建築の専門家として審査に加わった上林功氏に、その提案内容に踏み込んで語り合ってもらった。
-
分解容易型など新機軸も
2022年にはカタールでサッカーW杯(ワールドカップ)が開催される。主催するFIFA(国際サッカー連盟)は、サステナビリティーを大会開催の重要テーマとして掲げる。今回の新設スタジアムにも配慮を求めた。
-
他社に先んじて企画提案力磨く
事業性に目を向けて地域経営に貢献
低稼働の「ハコモノ」からの脱却が必要だ──。社内にスポーツ専門部署を設けて次世代スポーツ建築の在り方を追求している梓設計は、設計だけでなく、施設の企画にも積極的に関わっていく考えだ。
-
多様な観戦・運動体験をデザイン
蓄積の進む知見を計画に反映させる時が来た
「多様な世代が集う」「地域活性化の起爆剤となり得る」。スポーツ建築の分野で、こうした観点は中核の事業者の間には共有され始めた。コロナ後も視野に収め、施設の企画や計画に携わる側が開拓を始める番が来た。